Nobody's 法務

略称は「ノバ法」。著作権や特許とかを趣味程度に勉強している企業ホーマーのまとまりのない日記。あくまで個人的な見解であり、正確性等の保証はできませんので予めご了承くださいませ。

ついに始まる第2ラウンド〜私的DL違法化の行方〜

昨年から今年にかけてネットユーザーを中心に話題になった「違法コンテンツの私的ダウンロード違法化拡大」。

本当にギリギリのギリギリで改正が見送りになったことも記憶に新しいところ。

 

当ブログでも度々取り上げてきたところですが*1、ついに仕切りなおしでの第2ラウンドが始まろうとしているようです。 

 

ここ最近の動きを以下にメモしておきます。

 

 

1.パブコメ

まずは、上記記事にもあるように文化庁による「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の募集が始まりました。

審議会が始まる前にパブコメ募集がされるのは異例ではないでしょうか。

 

パブコメ実施の趣旨としては、以下のように書かれています。

侵害コンテンツのダウンロード違法化(刑事罰化を含む。以下同じ。)については、リーチサイト対策とともに、総合的な海賊版対策の一環として先の通常国会への法案提出を検討していましたが、国民の皆様の不安や懸念を払拭するに至らず、最終的には同国会への提出を見送ることとしました。これを受けて、特に侵害コンテンツのダウンロード違法化については、改めて、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの課題を両立した案を作成すべく、具体的な制度設計等の検討を行う必要があるところ、その前提として、まずは、国民の皆様の御意見を丁寧にお伺いしたいと考えております。

文化庁著作権課「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントの実施について 」

https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000192740

 

パブコメの内容を見ますと、今までのような自由記述onlyではなく、選択肢での回答箇所も多くあるようです。

f:id:kanegoonta:20190930234429p:plain

パブコメの「(別紙)質問事項及び回答様式」を一部抜粋

 

 

意見募集の締め切りは10/30。この問題に関心がある方は是非ともパブコメだされるのがよろしいかと思います。

 

10/2追記

パブコメの内容について、いくつか批判がされています。

まずは高木先生

 伊藤先生

そして 山田奨治先生

 

また、「文化庁当初案の考え方に関する資料」の12ページに興味深いQ&Aが記載されていました。(太字はkanekoによる)

 

(問7) 違法なアップロードからの複製が禁止されることで、論文への引用等のための利用も困難となるのではないか。


(答) ダウンロード違法化の対象範囲拡大は、あくまで、著作権法第30条及び第119条を改正するものですので、その他の権利制限規定の射程・解釈には影響を与えません。このため、例えば、著作権法第32条に規定する引用などは、その要件を満たせば、従来通り、権利者の許諾なく行うことができます。
なお、権利制限規定については、一般的に、直接の利用場面のみならず、その前段階における準備行為としての複製(引用であれば、引用が想定される資料の収集)についても、必要かつ合理的と認められる限度であれば許容されるものです。このため、例えば、著作権を侵害するコンテンツがインターネット上にアップロードされている場合に、それを一旦ダウンロードした上で、その問題点を指摘する論文等に当該コンテンツの一部を引用することは許容され得るものと考えられます。

 

文化庁著作権課「文化庁当初案の考え方に関する資料」

https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000192887

「違法コンテンツであっても制限規定を適用させて利用ができるのか」というのは個人的に疑問に思っていたところなのですが、そもそも可能なんですね。

 

10/2追記ここまで

 

 

2.日本漫画家協会と出版広報センターの共同声明

 そのような状況の中、日本漫画家協会と出版広報センターが『「侵害コンテンツのダウンロード違法化」と「リーチサイト規制」に関する共同声明』を出しました。

 

本声明には以下のような内容が記載されており、違法化を不要とするのではなく、バランスのよい内容にすべきという趣旨が読み取れます。

 

 日本漫画家協会は今年2月27日、「表現行為に過度な萎縮が生じるのではないか」との懸念から、「『ダウンロード違法化の対象範囲見直し』に関する声明」を出しました。しかしこの声明は、侵害コンテンツのダウンロード違法化およびリーチサイト規制のための法整備を不要とする趣旨の表明ではありません。私たちは改めて、侵害コンテンツのダウンロード違法化およびリーチサイト規制のための法整備が適切かつ迅速になされることを願うものです。

 

 侵害コンテンツのダウンロード違法化の要件設定にあたっては、脱法行為を容易に招くことが望ましくない一方、善良なユーザーに過度な萎縮が生じないようにすることも重要です。私たちは、この両方がバランス良く共に並び立つ法整備を希望しており、かつ、それは実現可能だと信じています。

 

 そのためにも、「『ダウンロード違法化の対象範囲見直し』に関する声明」で示された要件設定に限らず、他のより良いアイデアも柔軟に採り入れられながら法整備が実現することを願ってやみません。


 また、侵害コンテンツの利用を助長する悪質な行為を防ぐことも重要です。こうした観点から、リーチサイト規制についても早急な法整備の実現を望んでいます。

 

日本漫画家協会・出版広報センター『「侵害コンテンツのダウンロード違法化」と「リーチサイト規制」に関する共同声明』より

https://shuppankoho.jp/doc/20190925.pdf

 

 また、漫画家の赤松健先生も本声明を紹介しつつ以下のようなコメントをしています。

 

これを見ますと、少なくとも前回よりはまともな議論が期待できるのではないかと思うところです。

 

 

3.大渕先生の記事

ただ、引き続き安心はできない状況と個人的には理解しています。

先日ツイートしましたが、BLJ9月号の記事*2において東大の大渕先生が以下のような趣旨の記事を投稿しています。

 

まず、本記事では、以下のようなポイントを指摘したうえで、 「改正条文案のままで十分であり、いたずらに不安を煽り立てるのは誤りだ」とDL違法化の正当性及び見送り前の改正条文案の妥当性についてコメントしています。

  • DL違法化拡大は主要国の国際標準で(すでに立法化した)独仏等では問題になっていない
  • 録音録画のDL違法化時に問題は特に生じなかった
  • DL違法化は明示・黙示の許諾があれば合法であり、黙認や権利不行使という慣用的利用の場合も事実上、除外される
  • 改正条文案は、事実の錯誤のみならず、法律上の錯誤も免責し、刑事ではさらに要件が限定されている
  • 改正条文案は、ユーザーに配慮しすぎということはあっても逆はない
  • 軽微なものは自ずと外れる
  • そもそも違法DLの侵害探知自体が極めて困難

 

そしてさらに続けて、反対派の改正条文案については以下のようにdisっています。

 反対論者は、改正条文案の要件のうえに、国際標準にはまったくない2要件((ⅰ)「原作のまま」、(ⅱ)「著作権者の利益を不要に害することとなる場合」)まで加えようとする。(ⅰ)では、脱法の可能性が高すぎて、海賊版対策に大きな漏れが生じる。看過できない歪曲等の悪質な二次的著作物までも一律対象外とするのは不当である。違法ソースからのDLは違法な複製物の作成であり、窃盗に係る盗品を譲り受ける行為にも対応するので、(ⅱ)に該当するのは当然である。反対論者は、個人の情報収集の自由・表現の自由等との利益衡量を(ⅱ)で行うようであるが、そもそもDLだけでストリームは対象外であるから、知る権利は何ら妨げられていない。(ⅱ)は、利益衡量を裁判官に丸投げするので、コモンロー伝統のない日本では、「日本版フェアユース」を入れるのと同様の人治になってしまい、悪質ユーザーの居直り侵害、権利者の泣き寝入りを招く。

大渕哲也「ダウンロード違法化に対する誤解」(レクシスネクシス、BUSINESS LAW JOURNAL 2019年9月号)、9ページ

 

個人的には記事の内容には賛同しかねる部分があるのですが、そもそも本記事が1ページという文字数制限のある中で無理やりまとめて書かれた記事であると推測される点*3は踏まえて読む必要があると思います。

文字数制限のない状態でご意見の詳細をお伺いしたいところですね。

 

なお、反対論者の2要件とは、明治大学知的財産法政策研究所から出された声明を指すものと思われます。

「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する緊急声明

ダウンロード違法化の対象範囲の見直しについての意見(詳細版)

 

おそらく第2ラウンドでも上記の主張がされることが十分想定されるところ、パブコメ結果を踏まえて審議会でどのような議論がなされ、最終的にどのような内容の改正条文案になるのか、引き続き注目していきたいです。

 

*1:

 

 

 

*2:大渕哲也「ダウンロード違法化に対する誤解」(レクシスネクシス、BUSINESS LAW JOURNAL 2019年9月号)

*3:BLJのOpinionの記事は毎回A41ページしかない