私的ダウンロード違法化拡大のパブコメ結果がでてた。
文化庁の「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(2018年12月)」に対するパブコメ結果が公表されていたようです。
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「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(2018年12月)」に関する意見募集の結果について
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h30_08/pdf/r1413427_01.pdf
「ぶっちゃけ意味ないんじゃね?」という気がしないでもないですが、「何もしないよりはマシ」と思ってkanekoも初めて提出してみました。
「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」は534件(団体35件,個人499件)の意見があったよう。「音楽・映画を対象とする私的ダウンロード違法化」の際には8720件だったよう*1ですので、それに比べると少ないものの、リーチサイト規制関連が計60件なので突出してはいますね。
パブコメを読むと、各団体の考えがわかって非常に興味深いです。
なお、kanekoが提出したパブコメの内容は以下になります。
※パブコメ提出原文のママ(誤記やわかりにくい表現含めそのままです。)
※あくまでkaneko個人の考えです。
※認識として間違っている点があればご指摘お願いします。
以下の点からダウンロード違法化の見直し(以下、本案件)に反対します。
①ユーザー側の萎縮行為が見込まれるダウンロード違法化の拡大よりも先にやるべきことがあると思われる点(海賊版対策という趣旨なのであれば、プロバイダ責任制限法の改正が優先であろうと思われる点)
本案件は、いわゆる海賊版サイトへのサイトブロッキングの議論から生じた検討事案と理解しております。海賊版サイト自体は現行法及び別途パブコメ事案のリーチサイト規制案が成立されることによって、広く違法化されるものと理解しており、ユーザー側のダウンロード行為まで違法化する必要性はないものと考えます。むしろ、海賊版サイト側が違法であっても、訴訟の手続き的な面も含めてハードルの高いプロバイダ責任制限法を改正し、権利者側にとって利用しやすい制度に変更することのほうが「現実的な海賊版対策になる」ものと考えます。
なお、本案件のまとめ案において、萎縮効果は確たる事例はでてこなかった旨の記載がありましたが、私的領域内において現行法上違法でないものを違法化する以上、程度はあれ一定の萎縮効果は発生するものであり、萎縮効果は発生する前提で法改正の議論を検討すべきと考えます。
②二次創作文化への影響がありえる点(原著作者に許諾のない二次的著作物の私的ダウンロードも違法になり得る点)
本案件のまとめ案を拝見いたしますと、『原作者に無断で二次的著作物である同人誌やイラストを作成した作者が自身でSNS等のWEB上の共有プラットフォームに当該二次的著作物をアップした場合、これをユーザーが私的にダウンロードする行為』も一定条件のもと、違法化する可能性があるものと理解しております。
コミックマーケットをはじめとする同人業界においては、二次創作した作者がイベント前にTwitterやpixivといったWEB上に作品の画像を投稿し、告知する習慣があり、購入する側のユーザーは当該画像を日常的にダウンロードしています。また、購入する側のユーザーも「この作品が現作品の著作(権)者に許諾がないこと」を概ね理解しているケースが多くあるものと思われます。
したがって、本案件は上記点から同人業界(いわゆる二次創作)において一定程度の悪影響が発生する可能性のあるものと理解しております。
③海賊版を私的ダウンロードする行為が違法となり、一方で海賊版を私的利用目的で購入する行為は合法となり、整合性があわない部分が拡大する点
本案件のまとめ案によると、海賊版を私的ダウンロードする行為が一定要件のもと違法となり、一方で海賊版を私的利用目的で購入する行為は引き続き合法であると理解しています。ダウンロードは複製行為が発生するという違いはあるものの、形式的にはほぼ同じような行為なのに違法かどうかが変わってくることに違和感を感じております。
上記②の例において言及にした同人業界において、TwitterやpixivといったWEB上に投稿された著作(権)者に許諾がない二次的著作物をユーザー側がそれを知りながらダウンロードする行為は違法になり得るにもかかわらず、コミックマーケット等の同人イベントにおいて、同人誌等を私的利用目的で購入すること(さらには、自宅で裁断し、電子書籍化して自炊することも含めて)は違法にならないというのは、整合性が合わないものと思われます。これは音楽や映画の著作物においては、現行法でも生じている問題ではあると認識はしておりますが、この整合性が合わないことが拡大することに対しての説明が本案件のまとめ案において明確に説明されていないように見受けられるため、賛成できるものではないと感じております。
ちなみに、現在改正案は自民党の文部科学会で審議になったようです。
現在、法案は文化庁・文化庁審議会での反対意見を無視する形で、自民党の文部科学部会での審議に入ったと聞く。もう本当に時間がない。海賊版対策として検討された法案だったが、その実効性に対する検討分析もないまま、私たちの文化や産業を細らせてしまう規制がこのままでは本当にできてしまう。
— 水野 祐 Tasuku Mizuno 🙊 (@TasukuMizuno) February 16, 2019
水野先生いわく、もう時間がないよう。
ちょっと修正。法案の方向性が決まるのがあと10日くらいということです。具体的な法案になるのはその後ですが、その段階ではもう既定路線を覆すことはほぼ不可能になる。
— 水野 祐 Tasuku Mizuno 🙊 (@TasukuMizuno) February 16, 2019
今が声をあげる最後のチャンスかと。
*1:山田奨治「日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか」(2011、人文書院)、145頁