リーチサイト運営者逮捕の件
リーチサイト(侵害コンテンツへのリンクを集めたサイト)運営者が逮捕とのニュースが
ついにきたかというところで、
多くの法律関係者(特に知財クラスタ周り)がこのニュースに 反応していますね。
時間の問題とは思っていたものの、リーチサイト規制を議論しているところで、先に警察が動くのは個人的には予想外でした。
著作権(公衆送信権)侵害で逮捕とのことですが、正犯としての逮捕なのか幇助としての逮捕なのかは気になります。
ただ、他の記事を見ると
逮捕者が自ら侵害コンテンツをアップロードしていたわけではない(リーチサイト運営者はリンクを貼っただけ)という記事*1
と
リンクを貼るだけでなく、逮捕者同士で共謀して侵害コンテンツのアップロードも行っているという記事*2
がありますので、なんともいえない状況ですが、
ACCS(コンピュータソフトウェア著作権協会)のプレスリリースを見ると後者のようですね。
後者の事情が強いのでれば、今回の逮捕も理解はできます。
また、たとえ前者であった場合でも幇助としての逮捕であれば一応は理解できます。
なお、(報道の内容を見る限り後者の理解でよさそうですので、考える必要はないと思いますが、)
仮に前者でかつ正犯(著作権の直接侵害)としての逮捕だとすると疑問が生じます。
悪質度の違いはあれど、リンクは基本的には、著作権の直接侵害にあたらないはずです(過去ブログ参照)。
最初に今回のニュースを見た際に、「リンクを貼る行為を、カラオケ法理とか規範的主体論を適用させて逮捕なのかな?ちょっと無理あるよね」と感じていました。
個人的には、リンク行為につきカラオケ法理のように規範的侵害主体性を認めると外縁が曖昧になり萎縮効果も強そうなので、昨今議論されているように立法で対処すべきだと考えます(悪質なリーチサイトは止めるべき)が、先に逮捕例が出ましたね。いずれにせよ判決や立法の今後の行方に注目ですね。
— Ryutaro Nakagawa (@NakagawaRyutaro) 2017年10月30日
中川先生の見解に同意です。
ちなみに、リーチサイト関連の呟きを追っていると興味深い呟きが2つほど見つけました。
「公衆の求め」を増やすことが無許諾自動公衆送信の幇助といえるかどうかが一つの争点ですね。RT @shimanamiryo: 一般論としては、著作権侵害の幇助行為について、一定の要件の下に、著作権侵害とみなす旨の規定を置く時期がそろそろ来ているように思う。
— 小倉秀夫 (@Hideo_Ogura) 2017年10月31日
なるほど。そもそも自動公衆送信の幇助といえるかについても検討すべき事項があるのは盲点でした。卒論書いてたときはほとんど検討しなかったなぁ。反省。
もう一つはこちら
んで、(「遥か夢の跡」のような) リーチサイト運営自体については、潜脱を防ぎつつ、うまいことリーチサイトだけを捕捉できるような規定が思いつかないので特に手当はしない的な方向で検討が進んでた。
— 茂木 和洋 (@kzmogi) 2017年10月31日
一応、リンク差止 (削除させる) にあたっては現行のプロバイダ責任制限法と矛盾が出ないような手続き規定も設けて、その辺の手続きを踏むことで「(侵害コンテンツと)知りながら」要件を満たすようにしよーねという話ではあったけど。
— 茂木 和洋 (@kzmogi) 2017年10月31日
文化庁審議会が上記の流れだとすると、リンクを1つ張っただけでもOUTになる立法がなされる予感がします。
個人的には、通常のリンクは直接侵害にすべきではなく、リーチサイト等の悪質なリンク集についてはみなし侵害として差止請求の対象する方向がいいのではと思ってます。
ですので、リンク1つ貼るだけで著作権侵害になることや
二次創作にリンクを貼るだけで著作権侵害になることには違和感があり、
リーチサイトを規制するのであれば、みなし侵害の要件として、従来から検討されている
- 大量性(集合性・データベース性)
- 知情性(侵害コンテンツと知っていたこと、知りうる状況であったこと
といった要件に
- 原作品性(リンク先の侵害コンテンツが「原作品のまま」違法アップロードされていること)
を加えるべきではないかなぁと思っています。
(二次創作限定のリーチサイトとかでそうな気もするけど)
リーチサイトによるコンテンツ流通の被害額はものすごい額(うん千億円でしたっけ?)といわれていますが、
最近こういう記事とか見てるので、法規制が本当にコンテンツ業界にとってプラスになるのかなぁと感じてしまう毎日。
まぁ一概には言えないんでしょうけど。