Nobody's 法務

略称は「ノバ法」。著作権や特許とかを趣味程度に勉強している企業ホーマーのまとまりのない日記。あくまで個人的な見解であり、正確性等の保証はできませんので予めご了承くださいませ。

【書評】「オリンピックvs便乗商法ーまやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘」

  

オリンピックVS便乗商法: まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘

オリンピックVS便乗商法: まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘

 

 

著者は「へんな商標?」等の友利先生

 

まえがきに

オリンピック組織が、これまでどのようなアプローチで自己の利益を拡大してきたのか、そのために他人がどのような犠牲を強いられてきたのかを、できるだけ多くの具体例を紹介しながら総括し、それらを教訓として、正当行為に対するクレームや規制に、我々はどのように向き合うべきかを考察している。

3、4ページ

と書かれている通り、アンブッシュ・マーケティングとその規制に関して豊富な事例を紹介し細かく考察している書籍になります。

 

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※表紙が東京オリンピックエンブレム風なの狙ってる感あります。

 

なお、著者の立場は、アンブッシュ・マーケティング規制に批判的な立場であり、その前提で読む必要があります。

 

 

構成は概ね以下になっています。

 

 

以下、本書を読んで個人的に興味深かった点を中心に紹介していきます。

 

アンブッシュ・マーケティング規制の法的根拠の薄さを指摘

オリンピック憲章によると、オリンピック・シンボルとオリンピックの旗、モットー、讃歌、オリンピックと特定できるもの、名称、エンブレム、聖火およびトーチといったものは「オリンピック資産」と定義されています。 

(そしてオリンピック憲章をもとに大会ブランド基準が公表されています。)

本書では、このオリンピック資産に関して、主に知的財産法の観点から徹底的に考察されています。

結論としては、オリンピック組織が独占できる範囲は狭いということと理解しましたが、非常に勉強になります。

実際には知財権侵害でもないし、第三者の行為を差し止める法的な根拠がないのに「なんだか侵害っぽい」クレームを入れているんだよなと改めて理解できました。

なお、国内外のオリンピック関連の裁判例や各国でのアンブッシュ・マーケティング規制法についても紹介されています。

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146、147ページ

※○○リンピックの商標登録の有効性について争った事例。そういえば、ホームセンター「オリンピック」(母体の株式会社 Olympicグループは東証1部)ってありますよね。

 

世界各国でのアンブッシュ・マーケティングおよびその規制の豊富な事例紹介

アンブッシュ・マーケティングを確信犯型アンブッシュ・マーケティングと善意型アンブッシュ・マーケティングに分けて、世界各国の事例を紹介しています。

また、その(オリンピック関連組織による)警告事例もパターンに分けて分析されており、いわゆる「温度感」を理解できるようになっています。

 

アンブッシュ・マーケティング規制に至る背景の考察が興味深い

1業種1社契約やスポンサーの独占権確保のためにアンブッシュ・マーケティングを「敵」とみなすまでの流れが個人的に非常に興味深かったです。

 

個人的に興味深いと感じたメッセージ 

本書を読んで一番考えさせられたのが以下の文章です。

巧みなレトリックを駆使することで、他人の正当行為にあたかも違法であるかのような印象を与え、自分だけ特別扱いされる風潮を作り出そうとする行為は、一歩間違えば、どちらが「不正行為」なんだという話になり得る。みんなに平等な決められたルール(法律)のもとで公正な競争が行われるよう、正さなければならない。

その観点から、「実務上のトラブルを避けるために」という名目で、オリンピック組織の言い分に従うことをよしとする「自粛派」の見解には、筆者は賛同しかねる。確かに、例えばクライアントから相談を受けた場合に、法律上の解とは別に、クライアントがトラブルに巻き込まれないようにという観点から保守的な回答をすることは、それはクライアントの立場に立った、親身なアドバイスの形ではあるのだろう。「クレームが来るだけでも困る」というスタンスの事業者が少なくないのは事実だし、そうしたクライアントに「違法ではありません」と「正しい」助言をして、いざクレームが来てしまったら(クレームが言いがかりレベルだったとしても)、弁理士、弁護士がクライアントから怒られることもよくある。会員企業に対するJAROの助言などもそうかもしれない。

だが、それはあくまで個別のクライアントなどに対する助言だから、その相手にとって適切ということなのであって、一般論として「トラブルを避けるためには、法律上は必ずしも正しくない主張だとしても受け入れた方が無難」と判断するのは、やはりはっきりと不適切だと考える。仮にそうした判断を是とするのであれば、法的な正当性はさておき、声の大きい者、力の強い者には従うことが無難、という話になってしまう。なんのための法律なんだ。どんな恐怖社会なんだ。いくら相手が強者でも、法律を不当に解釈して競争を有利に運ぼうとしたり、他人の自由を侵害しようとしていたら、その法律の正当な解釈によって対抗しなければならない。特に法曹界の人間であるならばそうあるべきではないだろうか。

195、196ページ

※太字はkaneko

著者の主張はごもっともだと思います。一方、個人的には(是非はともかく)ビジネスジャッジとして『「実務上のトラブルを避けるために」という名目で、オリンピック組織の言い分に従うことをよしとする』という判断も一定程度理解はできるところ。このあたりは、よく法務界隈でも話題になりますが、悩ましいところではあります。

 

みなさん、もし事業部(弁護士・弁理士の方であれば顧客)からアンブッシュ・マーケティングの相談がきたらどう答えますか? 

 

 最後に

来年の東京オリンピックに向けてますます厳しくなるであろう「アンブッシュ・マーケティング規制」について改めて考えるきっかけになる書籍だと思いました。一度読んでみることをオススメします。

 

 

あ、あと

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