【書評】良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方~オンリーワンな利用規約入門書~

【改訂新版】良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方
- 作者: 雨宮美季,片岡玄一,橋詰卓司
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2019/04/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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はっしーさん、kataxさん、雨宮先生の3人がタッグを組んだ書籍の改訂版です。
Webサービスにおいて必須ともいえる、「利用規約」「プライバシーポリシー」「特定商取引法に基づく表示」の3つの規約にフォーカスして
- そもそもなぜ規約が必要なのか
- 規約を作成するうえで関係してくる法律の説明
- 規約の雛形(とその解説)
がコンパクトにまとまっています。
はしがきに
「この一冊を読めば、利用規約について検討すべきことがひととおりわかる」、そんなエンジニアや経営者のためのガイドブックを作りたいと考え、本書を書きました。
4ページ
と書かれているとおり、法律をよくわかってない人にも理解しやすいような工夫が各所に見られます。
エンジニアや経営者だけでなく、利用規約を初めて作る法務担当者にも非常に参考になる書籍だと思います。
【目次】
1.法律がよくわかってない人でも読める工夫がたくさん
法律書によくある「初っ端からガッツリ法律の解説にはいっていくので初学者が挫折する(パタンと本を閉じて二度と開かない)」系とは異なり、最初に「なんで利用規約が必要なのか」を実例を紹介しながらわかりやすく書かれています。
16,17ページ
↑利用規約の必要性の説明。すらすら読めます。いや、ほんと。
52,53ページ
↑会話形式で法的論点が整理されているページを容易する工夫も。法務担当者はこんな感じて事業部の担当者と会話しながら法的論点を抽出できないといけないですよね。汗
144,145ページ
↑「いろいろ問題点があるのはわかった。で、結局どうしたらクリアになんねん」みたいなのにもちゃんと答えてくれてます。これ見ながら、「きっと著者の方々が事業部から相談が来たときに回答している内容もこれくらいわかりやすいんだろうなぁ。」と思ってました。自分もこれくらいわかりやすく説明できるようになりたいです。 ちなみに本書は全体的に箇条書きが多く使われています。これもわかりやすさの工夫のひとつでしょうね。
2.もちろん、法律の内容も最低限カバー
Webサービスをユーザーに提供する上で、どのような法律が関係してきて、具体的に何が問題になるのかという点も、もちろん書かれています。
58,58ページ
↑単純に関係する法律を列挙するだけでなく、「難易度」も書かれています。全体的に各法律の詳細が書いてあるわけではありませんが、関係する法律の「勘所(ポイント)」が把握できるようになっています。
3.具体例が豊富
具体的な事例(過去実際にトラぶった事例や規約内容)が多く書かれていて、(リスクという意味で)イメージしやすいと感じました。また、トラブル事例だけでなく、参考になる規約についても具体的な社名をあげて説明されています。
104,105ページ
↑同業(類似サービス)同士での禁止事項の比較一覧表。これはウチもやってみようと思いました。絶対勉強になるし、自社利用規約でカバーできていない点も明確になりますからね。
4.でも法務が見てもためになる
法務担当者が見ても非常に勉強になると個人的に思いました。
4.1.規約の雛形がある
解説付きですので、実際に利用規約を作成するときに非常に参考になると思います。(英訳版があるのが地味に助かる。)
170,171ページ
4.2.利用規約作成時の注意点が把握できる
「ペナルティの3段階」「規約変更時の対応」といった箇所だけでなく、『役に立たない利用規約を生み出す「5つの落とし穴」』として挙げられている
- サービスに即した実効性のある内容になっているか
- 法令に適合しているか
- 炎上リスクのある条件がないか
- 正確性にかけていたり、理解しづらい表現になっていたりしないか
- 同意を取得するプロセスが適切なものになっているか
167ページ
は法務としても常に頭に入れて考えながら利用規約を作らなきゃいけないなと改めて思いました。
4.3.プラポリで意外と言及されていない点についても言及
プライバシーポリシーで見落とされがちな「情報収集モジュール」に関する箇所にもしっかり言及されています。アプリでいうSDKを含むものとkanekoは理解しました。アプリで情報取得系SDK組み込むケースって結構増えている(が同意から漏れてトラブるケースもよく聞く)ので言及されているのは助かります。ちなみに、「情報収集モジュール」での情報取得は第三者提供と整理しているように読み取れます。
4.4.あとがきの「弁護士・法務担当者の3つのホンネ」が個人的に好き
是非読んでください。「うんうん」とうなずきながら読めると思います。
なお、「もっと参考文献が記載されている方がいいのに」と思ったそこのあなた。ちゃんと著者の一人であるはっしーさんによる補足のエントリーが公開されています。
↓
『【改訂新版】良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方』を上梓しました〜参考文献・リンク集〜|Takuji Hashizume|note
5.最後に
たぶん会社でもう一冊買うと思う。