kanegonta’s blog

著作権や特許とかを趣味程度に勉強している企業ホーマーのまとまりのない日記。あくまで個人的な見解であり、正確性等の保証はできませんので予めご了承くださいませ。

【書評】ファッションロー~ありそうでなかったファッション専門法律書~

 

ファッション・ロー

ファッション・ロー

 

 

本の帯に「わが国初の体系的な解説書」と書かれているとおり、ファッションの法的問題に特化した書籍です。

さすがファッションローだなと感じる(法律書っぽくない)表紙がカッコイイ!

筆者は東海大の角田先生TMIの関先生

 

ファッション分野における法的問題点をファッションショー、ファッションデザイン、ファッションブランド、ファッションモデル、コスプレに分けてそれぞれ著作権、意匠、商標、不競法、パブリシティ権等の観点から解説がなされています。

また、日本だけでなく、ドイツやアメリカにおけるファッションローの解説もされています。

 

中身としては、裁判例の紹介(個人的にこんなに裁判例があるのかと驚きました。)をベースに法的問題点の解説がなされており、いわゆる「ガチ」な法律書ですが、写真も多く使われており、体系書としては比較的読みやすいと感じました。

 

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※ガチなのがおわかりいただけるだろうか

 

ファッション業界の法務の方にはオススメな一冊です。



目次はこちら

 第1章 総 説

 第1節 ファッションローの意義

 第2節 ファッションローの沿革

 第3節 ファッションロー研究の状況

 第4節 ファッションローにおける課題

 第5節 本書の構成

 第6節 「Forever21事件控訴審

 第7節 「TRIPP TRAPP事件」

 第8節 本書の目的

 

第2章 ファッションショーの法的保護

 第1節 著作権の概要

 第2節 ファッションショーと著作権

 第3節 ファッションショーの著作隣接権による保護

 第4節 ファッションショー主催者の権利

 第5節 ファッションショー演出家の権利

 

第3章 ファッションデザインの法的保護

 第1節 総 説

 第2節 著作権による保護

 第3節 意匠権による保護

 第4節 商標権による保護

 第5節 不正競争防止法による保護(周知商品等表示・著名商品等表示・商品形態)

 第6節 特許権実用新案権による保護

 

第4章 ファッションブランドの法的保護

 第1節 総 説

 第2節 商標権による保護

 第3節 不正競争防止法による保護

 

第5章 ファッションモデルの法的保護

 第1節 総 説

 第2節 パブリシティ権による保護

 第3節 ファッションモデルと出演契約

 第4節 ファッションモデルと専属契約

 第5節 モデル引き抜き問題

 

第6章 コスプレの法的保護

 第1節 総 説

 第2節 コスプレの著作権による保護

 第3節 コスプレイヤーの法的保護

 第4節 コスプレ・ショーの法的保護

 第5節 コスプレ・ディレクターの保護

 第6節 コスプレ・コンテンツの保護

 第7節 コスプレの契約による保護

 

第7章 ドイツにおけるファッションロー

 第1節 総 説

 第2節 著作権法による保護

 第3節 意匠権による保護

 第4節 商標権による保護

 

第8章 米国におけるファッションロー

 第1節 総 説

 第2節 著作権による保護

 第3節 意匠特許による保護

 第4節 商標およびトレード・ドレスによる保護

 

 

さて、ファッションセンスゼロ(自虐も込めている)な私がこの本を購入したかというと、第6章に「コスプレの法的保護」があるからです。

 

法律書の中でコスプレの法的保護について言及した書籍や論文については、(私個人が知っている範囲ですが、)月刊パテント誌にて少し言及されていた程度*1ほとんど見たことがなく*2、非常に興味深い内容となっています。

 

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※法律書にコスプレイヤーの写真が載っている!

 

 

個人的に「コスプレの法的保護」の項目で興味深かったのは以下の3点になります。

 

①コスプレの法的問題について詳細に検討されている。

例えば、コスプレと著作権については以下のように述べられています。

 

 コスプレの制作は、キャラクターの翻案のうち、二次的な表現形式を立体的な表現形式に変更する変形行為(著27条)に当たり、原則として、それらの原著作物の著作者の許諾が必要となる。

 コスプレは、個人で楽しむ場合が多く、通常は私的使用目的の複製または翻案という公正利用をして原作者の許諾は必要ないが、初めから各種のイベントやTVなどで業務上の使用のために複製、翻案、展示、譲渡、貸与等により利用される場合のほか、個人のコスプレイヤーがコスプレショーやイベントに参加する場合には、原著作者の許諾を得る必要が生じる。

 もっとも、アニメーションやゲームソフトなどの登場人物であっても、そのような登場人物の映像に普通にみられるごくありふれたものである場合には、「表現上の創作性がない」として著作物性は認められず、その複製または翻案は著作権侵害とはならないとされることがある。

 また、コスプレは、通常の著作物の複製または翻案とは異なり、コスプレイヤーを通した原著作物の利用行為であり、そのコスプレイヤーの肖像ないし容姿とともに複製物や翻案物を制作し、そのコスプレイヤーがアニメや漫画のキャラクターに成りきってコスプレを公衆に提示することがある。そのため、コスプレの写真や映像を利用するためには、上記の著作権の処理に加えてコスプレイヤーの肖像権とパブリシティ権の処理が必要となる点が特徴的である。さらには、コスプレイヤーの動作は思想感情を創作的に表現する場合があり、舞踊または無言劇の著作物となる可能性があるし、実演として実演家人格権や著作隣接権が生じる。

 コスプレにおける衣装の制作は、キャラクターを複製または翻案する行為であるが、原著作物の著作者の許諾を得ていない場合には、その著作権(翻案権)侵害となる。

【228~229頁より】

 

個人な感想ですが、コスプレは一般的に行われるようになりつつある(コミケだけでなく、ハロウィンとかでも気軽にコスプレしますよね。ディズニーハロウィーンとか川崎ハロウィンとか。)にもかかわらず、法的問題について考えると、非常に複雑であると改めて感じます。

例えば、コスプレと著作権について「対象となる人」と「権利」について考えてみると、パッと思いつく限りでも考慮すべき点が以下のようにあると思います。

 

【対象となる人】

  • アニメ・マンガ・ゲーム等のキャラクターの権利者(アニメの製作委員会、漫画の作者、ゲーム会社等)
  • コスプレ衣装の制作者
  • コスプレ衣装の販売者
  • コスプレ衣装の貸与者
  • コスプレイヤー(コスプレ衣装を着る人)
  • コスプレイヤーを撮影する人(いわゆるカメコとか)
  • 写真に撮ったものを写真集にして販売(いわゆるROM販売)する人

 

【対象となる権利】

※原著作物であるアニメのキャラクターの著作物性やアニメのキャラクターの衣装の著作物性の検討をしたうえで

著作権ではないが、コスプレイヤー自体の権利としての

 

対象となる人それぞれに対象となる権利がどう発生し、どう適用され得るのかを検討することになると思うのですが、正直複雑すぎて一般の人には理解できないのではと感じてしまいます。

(モチロン私自身も全てを理解できていないですが)

 

たとえ法的には著作権侵害であった場合でも、あくまでファン活動の一環としてコスプレをする分には、例えコミケニコニコ超会議といった場であっても著作者側がクレームをつけて問題になるケースは少ないであろうと考えられるものの、

一般の方にも分かりやすいガイドラインのようなものがあるといいのかなと感じます。

ワンフェスのような一日版権許諾をとるという方法もありますが、コミケにような何万人と来るようなイベントにおいて同様の措置をとるのは現実的ではないでしょう。)



②コスプレして公衆に見せる行為を展示権として整理している。

個人的には上演権と理解していたのですが、本書では展示権として整理されている点が勉強になりました。

※展示権は原作品が対象だが、二次的著作物としてのコスプレ衣装を原作品として解するため展示権が及ぶ。

 

 

③コスプレ利用許諾契約やコスプレ出演契約の契約書雛型が記載されている。

単純な体系書ではなく、実務を考えた体系書であると感じた部分です。(体系書で契約書雛型が添付されているものってほとんどないですよね?)

業務上、キャラクターライセンスの契約書を普段見ることがないので「ライセンスの範囲ってこれくらいなのかー」を考えながら読みました。

 

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※右側に契約雛型が記載されています。

 


コスプレを含むファッションローの分野は今後も‘‘アツい”分野だと思うので、研究や判例の蓄積がより進むといいなぁと思う次第でございます。

 

*1:月間パテント2016年10月号 平成27年著作権委員会第4部会「コンテンツ内オブジェクトによるビジネスについての法的諸問題」https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201610/jpaapatent201610_046-062.pdf

*2:Webの記事であれば、福井健策先生が書いたコラムがありますし、小倉先生もブログを書いていますね。

福井先生のコラム:http://www.kottolaw.com/column/001429.html

小倉先生のブログ:http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2013/12/post-787c.html