「音楽教室での著作権料徴収の件」で感じるズレ
例の音楽教室から著作権料を徴収する件が話題になっていたわけですが、雑感を少しだけ。
法律論については多くの方が解説*1されているので、ここでは詳しくは書きません。
ネット上では「JASRACやりすぎやろ(意訳)」と叩かれているわけですが、この件で改めて感じるのは、「一般人の感覚」と「著作権法」に大きなズレがあるのだなということです。
つまり、「著作権法は一般の人が納得できる法律になっていない点がある」と。
だからこそ上記のような感情論が起こるのかなと思いました。
この「ズレ」の原因を何なのか?
まず、著作権法は、「思想又は感情を創作的に表現しているもの」である著作物について、利用者の公正な利用と権利者(著作者等)の保護を規定して、文化の発展に寄与することを目的としています。
従って、国民の誰もが著作者になり得るし、誰もが利用者にもなり得るため、利用者と権利者のバランスが大事となってきます。
にもかかわらず、著作物の利用者を大きく制限し著作者の権利を拡大するような謎理論が存在している現状があります。
その謎理論とは、
著作権法を少しでも勉強していればでてくる
「一人でも公衆」理論や
「カラオケ」法理等の規範的主体論(物理的に侵害行為を行っていないものを侵害の主体と認める理論。例:カラオケスナックでの歌唱の主体は客ではなく、カラオケスナック側*2)
といった理論(他にもいろいろあるけど)であり、
これらの過去の判例から導き出された権利者寄りの法的解釈は、異論はあるものの実務家や法学者の間では定着しているが、「一般人の感覚」からは明らかにおかしいのではないでしょうか。
しかもこれらは条文上には記載がないですし。(過去審議会で検討はされたけど)
今回の件での批判は、
JASRACというより(もちろん個人的には今回の件はやり過ぎ感がありますし、音楽でお金儲けをしているならば何でも利用料をよこせというスタンスには違和感を覚えていますが)
「ズレ」を生み出している元凶である
・JASRACの主張を認めて謎理論を展開した過去の裁判所の判断
や
・今回のJASRACの主張を認める余地が解釈上可能な現行の著作権法
に対して行うべきではないでしょうか。
そしてその上でもう一度、間接侵害規定の整備等(まぁ無理なんでしょうが)で「ズレ」を明確にしつつ、その「ズレ」を広く理解させる(著作権教育とかかな)必要があるのではないかと。
そんなことを考えながら日々もやもやしております。
*1:
主な論点としては、
著作権法第22条の「著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として・・・演奏する」ことに該当するかどうかという点について、
・「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的」といえるのか
・誰が誰に向かって演奏するのか(演奏の主体は誰か)
・権利制限規定に該当するのか
・演奏権は「消尽」しているのか(島並先生のtwitterでの発言より)
以下参考となるブログ
・福井健策先生「JASRAC音楽教室問題から1週間。取材等で話したことをざっくりまとめてみる」
http://www.kottolaw.com/column/001379.html
・栗原潔先生「JASRAC vs 音楽教室:法廷で争った場合の論点を考える」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuriharakiyoshi/20170206-00067411/
・同上「JASRACが音楽教室からも著作権使用料を徴収しようとする法的根拠は何か?」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuriharakiyoshi/20170202-00067263/
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2017/02/jasrac-0677.html
同上「音楽教室でJASRAC管理楽曲は「演奏」されているのか。」
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2017/02/jasrac-3747.html
*2:この理論は、カラオケ装置リース会社、テレビ転送サービス、音楽(変換)ストレージサービス、ファイル共有サービス、自炊代行まで広がっている
#legalAC 法務が働きながら知財系大学院に行ってみた
法務系 Advent Calendar 2016のエントリーです。
Utastmさんからバトン受け取りました。
kataxさんの「無資格法務のキャリアパスについて」というエントリーがとても考えさせられるものがあったので、これに便乗して(?)まさに無資格法務として知財法務コースを目指ざしたいなぁと思った人間が「働きながら知財系大学院に行くという、ちょっと普通じゃない選択をしてみたらどうだったか」ということを独断と偏見で書いてみようと思いましてこの内容でエントリーしました。
これから働きながら大学院に行こうと思っている人にとって少しでも参考になれば嬉しいです。
※あくまで知財系の大学院の話なので、ロースクール等の大学院には当てはまらないことがあるかもです。
※この内容をチョイスした時点である程度身バレ覚悟です。
※このエントリーはあくまで私個人の見解です。
1.【結論】
無資格法務として働きながら知財系大学院に行くことは
①はっきりとした目的意識
②何かを捨てる覚悟を持つこと
③職場(と家族)の理解とそこそこの体力(とそこそこのお金)
があれば得るものが大きいし、仕事とも両立できると思います。
一方、少しでも上記が満たせない場合は
・資格(例えば弁理士)をストレートに目指すか
・(実務を行える職場にいるのであれば)実務を通して知識と経験を積む
ほうが無難だと思います。
2.【いまの自分】
私は、
平日昼間はIT系?でひよっこ法務部員として働きつつ、
平日夜と土日は大学院生として勉強する生活をしています。
仕事の割合としては、
契約法務と案件相談(著作権含む)が7割
なんちゃって知財(出願サポート・クリアランス・体制作り)が3割
といったところです。
大学院では、特許、商標、著作権といった分野を幅広く勉強しています。
今に至った経緯としては、新卒で営業として3年間働いていて、今後のキャリアを考えたときに、
「ある程度好きなことを仕事にしたい(今の会社ではそれば難しい)」と思い、
知財を大学院で勉強しつつ、法務と知財を実務として仕事することを決めて、転職&大学院入学をほぼ同時に行った、といった経緯があります。
なお、実務を知財一本にしなかったのは、法学部出身だったというよりは、理系出身ではない以上、知財(特に技術的な知識を要することの多い特許分野)一本で未経験のペーペーが転職するのはリスクが高いと判断したためです。
3.【働きながら大学院に行く上で必要だと思ったこと】
①目的意識
当たり前かもしれませんが、
・自分のキャリアとして、ゴールは何なのか
・いつまでに何をしたいのか
・そのために大学院で何を学びたいのか
といったところの意識ははっきりさせておくべきだと思います。
もちろん、途中でずれてくるものだとは思いますが、ここがしっかりしていないと、(言い方が悪いかもしれませんが)大切なお金をドブに捨てることになるかもしれません。
なお、知財系の大学院によっては一定の要件を満たすと弁理士試験の一次免除があったりしますが、
単純に弁理士をゴールとして目指すなら資格の学校行く方がコスパ(お金と時間的な面から)がいいと思います。
ちなみに私の場合は、
・知財に関する基礎的知識だけでなく、実務的知識も身につけること
・知財業界の知り合いを少しでも広げること
の2点を目的として大学院に入学しました。
以下、大学院に入って気づいたことを書いていきます。
【メリット】
(1)学んだことがすぐ実務に行かせる
これは自分の「学習分野=実務の分野」であることが大きいと思うのですが、
「あ、これ先週講義で習ったやつだ!(進●ゼミ風に)」ってほんとになって少し感動しました。
ちなみに、大学院の講義ってどんなのかというと、
いわゆる普通の講義形式のものから特許明細書をひたすら読んだり、明細書を作成して教授に添削してもらったり、特許調査のやり方を学んだり、ライセンス契約書つくったりする講義があって個人的には面白い講義が多くありました。
(2)交友関係を広げられる
やはり共に勉学に励む仲間や実務家の知り合いができたことは大きいです。
私のいる大学院には、文系理系問わず、学部卒のピチピチ(これ死語ですかね?)で若い学生からバリバリの知財部員まで幅広い世代の人がいます。
また、講義によってはゲスト講師として来た実務家の方との交流もできたりします。OBとの交流はそこまで多いとは感じませんが、ないことはないです。
(知財業界は比較的?狭い業界ですので、)一人知り合いができると芋づる式に多くの知財業界の方と知り合いになれます。最終的に学会、オフ会、セミナー等に参加すると必ず知り合いがいる状況が生まれます。
(3)気兼ねなく実務家や教授に質問が出来る
一応学生ですからね。講師(知財部や特許庁出身の教授から知財系の実務家まで。実務家と学者の割合は大学院によってまちまち。社会人向けは実務家の割合が高い。)に会社での実務における質問をしまくれます。
学費払っているから当然かもしれないけど。
学生万歳。
(4)ちゃんと勉強する
これは間違いなく、私自身が学部時代まっっったく勉強していなかった反動だと思いますが、自分の金で、目的意識をもって学校に行くとちゃんと勉強します。
(5)学割が使える
地味ですが、もろもろ学割が使えます。
(6)所属する学校の名で学会発表ができる。
企業勤めの無資格法務だと肩書きが企業名しかないことが多いため企業によっては学会発表がしにくい場合はあるかと思われます。(特に業務に直接関係のないテーマであった場合はなおさら)
その点、学校名で学会発表できると楽です。大学院の学生としての自己研究の発表なので通説だってdisれちゃいます。(もちろんそれ相応の反論は覚悟しないといけないですが)
【デメリット】
ただ、一方でデメリット(課題?)もあります。
(1)学生ごとにモチベーションの差が生じている。
これはあくまで私の私見ではありますが、
学部卒も受け入れる大学院だと、残念ながらいわゆる学生の「モラトリアム」となっている面が否めない点があり、やる気のある院生とそうではない院生とで差があるように感じます。(もちろん学部卒でもやる気ある学生はいます)
その中でもいかにして自分のモチベーションを高く保っていくかが大事になってくると感じました。
私の場合は、入学してから同じような問題意識を抱える院生と自主ゼミを立ち上げ、切磋琢磨できる環境を作り出すことで周りに引きずられてモチベーションが下がることがないようにしていました。
(2)知財系大学院は全体的に学生数が減っている
ソースはちゃんと調べていませんが、
かつて知財が盛り上がっていた時期に比べると減少傾向のようです
一部の知財系大学院では再編が進んでいます。
(3)その他
うん。これ以上は書けないかも(苦笑)
②何かを捨てる覚悟を持つこと
サラリーマンと大学院生を両立するためには、「有限な時間をどう効率的に使うのか」という問題(当たり前ですが)にぶち当たります。
従って何かを捨てることになります。
例えば、
・趣味の時間を捨てること
私の場合は毎日の深夜アニメ鑑賞を断ち切りました。
(まぁ夏と冬は有明に行きますが。Twitterも断ち切れてませんが。)
・優先順位をつけること
仕事>学校>趣味>>>>越えられない壁>>>>家族
という優先順位を最初からつけました。
また仕事の中、学校の中、趣味の中でも明確に優先順位をつけました。
そして低いものは切る、か他の人にお願いする。(といいつつまだまだできていない)
とはいえ、仕事が忙しいときは学校に遅刻していくこともあったり。
③職場(と家族)の理解とそこそこの体力(とそこそこのお金)
職場の理解は絶対に必要だと思います。
私の場合は奇跡的に働きながら大学院にも行かせてくれる会社に出会えたので職場の理解がある前提で大学院に通えていますが、所属する会社によっては難しいかもしれません。
あと家族の理解も必要です。
特に家庭をお持ちの方は大学院に時間が割かれてしまう以上、家庭への時間を割くことができなくなってしまいます。
そしてなにより体力。
どんなに効率よく仕事をしていても、レポート・テスト期間は睡眠時間を削ることになります。
継続的な運動と栄養の偏らない食生活(とできれば最低限の睡眠時間)は必要。(ラーメン●郎とかダメ!ゼッタイ!)
最後に学費。
学費は大学院によってまちまちなのですが、ある程度は貯めておく必要があると思います。奨学金という方法もありますが、できれば避けたいですよね。。。
ただ、最近は専門職大学院における教育給付金の制度があるので、負担が軽くなる場合があります。
ちなみに私は申請し忘れました。。。。。(入学前の事前申請らしい)
4.【最後に】
ものすごく個人的なことを書いてしまっているのですが、そんなエントリーが1個くらいあってもいいのかなと開き直っています。
卒業後どうするの?というのを最近良く聞かれるのですが、
とりあえず最低限の知識は身につけることができたと思うので仕事に集中しようと思っています。
ただ仕事をメインとしつつも
・法務知財ブロガーを目指す
・アカデミックを続ける(博士課程に行く)
・弁理士試験の勉強を始める
という選択肢も考えていたりします。
まとまりないですが、この辺で。
次はmiraisaaanさん!
よろしくお願いしまぁぁぁす!(サ●ー・ウォーズ風に)
違法コンテンツへリンクを貼るのは著作権侵害なんだっけ問題
久しぶりにブログを書きます。
「君の名は。」面白いですよね。
ところで最近こんな出来事が
どうやら「君の名は。」の違法動画がでまわっているので、それを指摘するための公式アカウントが開設され手作業?でひたすら違法動画のリンクを張っているアカウントにリプを送っているようですね。
中の人大変だなぁと思うしだいでございます。
そこで、
「違法動画にリンクを張るのは著作権侵害なの?」
という疑問はあろうかと思います。
ちょうど卒論のテーマがその辺なので、少しブログに書いてみようと思います。
※ここでは
・フレーミングやエンベッドといった「埋め込み型リンク」
・画像への直リンクを貼る「イメージリンク」
は法的問題点が増えるため考慮しません。
単純なテキストURL型のハイパーリンクを想定しています。
※詳しい資料等はわかる範囲で脚注にぶちこんであります。ご興味のある方はそこから調べてもらえれば。
※筆者は知財を現在勉強していますが、士業の資格をもっているわけでもないそのへんによくいるニワカ知財クラスタですので、詳しく知りたい方は専門家にご相談下さい。また、筆者が間違って理解している部分もあるかもしれませんので、その際はご指摘下さいませ。
1.【結論】
違法コンテンツへのリンク行為は
①リンク先のコンテンツが違法アップロードされたものと知っていてリンクを貼ること
②リンク設置時はリンク先が違法なコンテンツかどうかを知らなかったが、リンク設置後に権利者から指摘がきたにもかかわらずリンクを張り続けること。
は著作権侵害の幇助になるおそれがあるため、やめておいたほうが無難
2.【原則論】
通常のリンク行為は、あくまでリンク先のコンテンツの存在場所を示すのみであり、当該コンテンツを複製しているわけではなく、また当該コンテンツを送信しているのはあくまでリンク先なので、複製権及び公衆送信権を含めた著作権を侵害しないもの*1
と考えられます。
3.【リンク先が違法コンテンツの場合は?】
ただ、リンク先が違法なコンテンツである場合はちょっと話が別です。
「リンク先が違法コンテンツな場合」とは、
- リンクを見て実際にリンク先にとんでいくインターネットユーザー(以下、「ユーザー」といいます)が、リンク先で違法にアップロードされたコンテンツを視聴できる場合(ユーザーは違法行為をしていない。) 【例:リンク先が違法にアップロードされた映画で、ユーザーはリンク先のサイトにおいてストリーミング再生で視聴できる。】
-
ユーザーが、リンク先で違法にアップロードされたコンテンツをダウンロード等できる場合(ユーザーは違法行為*2をしている)
に分けられます。(以下、まとめて「違法コンテンツ分類」といいます。)
リンク先が違法なコンテンツであった場合、リンクを貼った者は
直接著作権侵害をしているわけではないが、
リンク行為によって違法送信の拡大をしているということで(共同)不法行為責任(民事上の著作権侵害の幇助)を負う可能性が従来から指摘*3されています。
ただ、インターネット上のコンテンツが違法かどうかをユーザーが判断をするのは一般的には難しいため、「ロケットニュース24事件*4」では、
著作権侵害(公衆送信権等)を否定した上で、不法行為については、
リンク先のコンテンツが違法/合法の区別がつかない前提で、
権利者からの通知が来た時点(リンク先のコンテンツが違法だと知った時点)でリンクを削除しているので、否定されています。
逆を言うと
①リンク先のコンテンツが違法アップロードされたものと知っていてリンクを貼ること
②リンク設置時はリンク先が違法なコンテンツかどうかを知らなかったが、リンク設置後に権利者から指摘がきたにもかかわらずリンクを張り続けること。
はヤバイかもしれない。
そういえば、リッピングソフトへのリンクを貼った者を著作権侵害の幇助として検挙した例*5がありましたね。違法コンテンツ分類では(2)に該当かつリンクを貼った者に悪意があったようなので、悪質な例かもしれません。
あと発信者情報開示請求で「違法アップロード者=リンクを貼った者」とみなされた事例*6がありましたね。
「君の名は。」の事件は、
①は、人によっては違法と知らずにリンクの設置をしているかもしれませんが、
②は、製作委員会のリプによって少なくともリンク先が違法コンテンツであることがリンクを貼った者も気づくので、そのままリンクを貼り続けるのは当てはまりそうですね。
4.【余談:リンクを貼った者は著作権の侵害主体にならないのか】
これは従来から検討されてきていたもので、いわゆる「リーチサイト」の問題で検討されてきた問題です。
リーチサイトの正確な定義はないのですが、「別のサイトにアップロードされた違法コンテンツへのリンクを集めたサイト」とでも言っておきましょうか。
つまり通常のリンクではなく、悪質なリンク集といったところです。
コンテンツホルダーからは、「違法コンテンツの拡大を促進*7し、かつリーチサイトの運用者は広告収入で儲けている」点から法規制を求めていますね。
過去は、解釈論として、著作物の使用の主体を、一定の要件のもと、「実際に使用しているユーザー」ではなく、「そのユーザーに手を貸して利益を得る業者」として考えることで著作権侵害を構成する規範的主体論(いわゆる「カラオケ法理」)に当てはめられるかどうかが議論*8されていましたが、
現在は、みなし侵害規定にぶち込むことで法規制をしようという動き*9になっています。
インターネット(表現)の自由とも抵触してきますし、みなし侵害の要件によって、拡大解釈されて一般のユーザーのリンク行為に過度な規制がかかるのも問題だよなと思うしだいです。
ここは今後の動きに注目ですね。
また、EUでは、違法コンテンツへのリンクに関して、【非営利かつ知情性なし】以外は広く著作権侵害になりうる判決が欧州司法裁判所からでて話題*10になっていますね。
この辺はまた今度。
*1:同趣旨の内容の文献として、佐藤恵太「インターネット利用に特有の諸技術と知的財産法」ジュリスト1182号46頁、飯沼総合法律事務所編『デジタル著作権の知識とQ&A』(法学書院、2008)86,87頁、鈴木基宏『Q&A著作権法』(青林書院、2011)170頁、松田政行編『著作権法の実務』(経済産業調整会、2010)160頁〔松田政行〕
*2:私的利用目的でも違法コンテンツのダウンロードはNGである旨の著作権法第30条1項3号を前提としていますが、ここは動画や音楽を前提としており、漫画やHP等の静止画・文字系のコンテンツは対象外なので本来はもう少し詳細(侵害者の悪意も含め)に区分が必要だよなぁとは思ってはいます。(やる気ない)
*3:田村善之『著作権法概説 第2版』(有斐閣、2006)192頁
*4:大阪地判平成25年6月20日判決。本事件は埋め込み型リンクの事案なので、本来は人格権の問題(同一性保持権と氏名表示権)や侵害主体の問題(いわゆる「埋め込み型のときは送信主体がリンク元だ!」という議論)が出てきます。また、本事件は地裁判決レベルかつ本人訴訟である点も(今後別の訴訟では逆の結論が出る可能性がないわけではないということで)ある程度考慮すべきでしょう。本事件を解説したブログとしてはhttp://www.azx.co.jp/blog/?p=359
*5:一般社団法人日本映像ソフト協会「2015/8/19 JVAニュースリリース」http://jva-net.or.jp/news/news_150819/news.pdf
*6:東京地判平成26・1・17 LEX/DB 文献番号25446210
*7:国立大学法人電気通信大学「平成23年度知的財産侵害対策ワーキング・グループ等侵害対策強化事業(リーチサイト及びストレージサイトにおける知的財産侵害実態調査)報告書」(平成24年3月)。
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E002243.pdf
*8:論文としては、安田和史「リーチサイトの運営者にかかる著作権侵害の責任に関する考察」日本大学知財ジャーナルVol.7(2014)http://www.law.nihon-u.ac.jp/publication/pdf/chizai/7/04.pdf
なお、文化庁審議会としては、文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会 平成24年第3回~第7回で議題になっている。以下参考までにリンクを貼る。
第3回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_03/index.html
第4回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_04/index.html
第5回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_05/index.html
第6回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_06/index.html
第7回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_07/index.html
*9:知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会 次世代知財システム検討委員会報告書~デジタル・ネットワーク化に対応する次世代知財システム構築に向けて~(2016)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/hokokusho.pdf
【感想】NEW GAME! 3巻
最近の4コマ日常系マンガではイチオシですね。
はやくアニメみたい。
この3巻をですね、一言で表すと。。。
ひふみんがかわいすぎる!
【感想】BUISINESS LAW JOURNAL(2016年2月号)
いまさらながらビジロー2月号読みました。
BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2016年 2月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: レクシスネクシス・ジャパン
- 発売日: 2015/12/21
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (1件) を見る
主に見たのは以下ですね。
①法務のためのブックガイド2016
②法務部門 CLOSEUP
③TPP協定の概要と実務対応
④契約書審査・差のつくポイント
以下とりとめもなく感想を
①法務のためのブックガイド2016
ビジロー見始めたの最近なのですが、いいですねこの企画。
さっそく「特許調査入門」と「事業をサポートする知的財産実務マニュアル」は購入させていただきました。
「業務委託契約書の作成と審査の実務」と「システム開発紛争ハンドブック」「アプリ法務ハンドブック」はほしいものリストにいれました。
お金に余裕ができたら購入しようと思います。
②法務部門 CLOSEUP
ファンケルって法務5人でまわしてるんですね。
契約書管理システムってどんなやつなんですかね。私気になります。
③TPP協定の概要と実務対応
実務に影響が出る部分を網羅的に記載されていると感じました。
④契約書審査・差のつくポイント
再委託ですね。復習になりました。
ちなみにこれって本になったりしないんですかね?
なったら購入検討します。
ところで、カジノ専門弁護士なんて海外にはいるんですね。
すごくすごくバブリーな匂いがします。
コスプレの著作権法上の問題点~詳細版~
ブログ引越ししました。
最近コスプレと著作権で何かと話題になることが多い気がしたので、「コスプレの著作権法上の問題点」ということで法的問題点をまとめてみました。
(2017/5/4追記)マリカー事件に関する考察はこちら
※この記事の意図は法的問題点の提示であり、決してコスプレを始めとした二次創作を否定するつもりで書いているわけではありません。(むしろ二次創作文化に肯定的な立場です。いいぞもっとやれな立場)
ただ、著作権をいまいち理解できていないが故にトラブルになる事例も多く、コスプレをする側(以下、「コスプレイヤー」)やそれを撮影する側(以下、「カメコ」)もこういう法的問題点があるということを理解してほしいという意図で書いています。
もっというと、これだけ問題点があるけど、権利者のお目こぼし(黙認)によってなんとかなっているんだよということを理解してほしいということです。
※筆者は知財を現在勉強していますが、士業の資格をもっているわけでもないそのへんによくいるニワカ知財クラスタですので、詳しく知りたい方は専門家にご相談下さい。また、筆者が間違って理解している部分もあるかもしれませんので、その際はご指摘下さいませ。
【目次】
1 コスプレの法的問題点~原則論~
前提条件は、アニメや漫画の登場人物(キャラクター)のコスプレ衣装です*1
【原則論①】
アニメや漫画の登場人物(キャラクター)のコスプレ衣装を権利者に無許可で制作することは、
そのキャラクター*2(の衣装デザイン)を有形的に再製しているので、
原則、複製権(21条)または制作者のオリジナリティも加わっていれば翻案権*3(27条)の侵害になります。
これは、業者がコスプレ衣装を制作していれば業者が侵害(公式に許諾を得ている場合を除く)、
個人(コスプレイヤーの自作も含む)で私的使用の範囲を超えて制作をしていればその個人が侵害したことになります。(個人で制作した場合の例外規定があるのは後述!)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【細かい注意点】
これは元のキャラクター(の衣装デザイン)に著作物性が認められること(衣装に著作権法上の保護が認められるほどオリジナリティがある状態*4)が前提です。
ただ、上記は個別具体的に判断されるため、一概に著作物性の有り/無しは判断できません。仮に、著作物性がなしとされ場合、その後の利用は自由(コスしてもいろいろしても問題ない)ということになります。
また、どのレベルでのコスプレ衣装を制作すると「複製」を行ったといえるかも議論の余地があるようです。たとえば、小倉先生のブログ*5によるとアニメキャラクターの衣装デザインの法的考え方として、以下の2つがあると述べています。
1つは、衣装デザインがそのアニメキャラクターの「表現上の本質的特徴部分」にあたるといえる場合に限り、それを直接感得しうるような形状の衣装を作成することは「複製」に当たるとする考え方です。ただし、アニメキャラクターの表現上の本質的特徴部分は、顔立ちや体つきにあるのが通常なので、たいていの場合衣装デザインが似ていると言うだけでは、元のアニメキャラクターの「表現上の本質的特徴部分」を直接感得できることにはならないとする考え方です。*6
⇒衣装デザインをキャラクターの一部として考え、元ネタのキャラクターの衣装デザインがそのキャラクターの表現上の本質的特徴部分であるといえるときに、その本質的特徴部分を直接感得しうるようなコスプレ衣装を制作したときに複製権の侵害になる、ということでしょうか。
もう1つは、衣装のデザインの類似性は基本的に意匠法で対処すべきなので、アニメキャラクターの衣装デザインと類似する衣装が製作されたとしても著作物としての利用がなされていないので原則として著作権侵害とすべきではないが、例外的に、その衣装が純粋美術に匹敵する高度の観賞性を認められるようなものであった場合には、美術の著作物として有形的に再製されたとする考え方です。
⇒こちらは衣装デザインを「単体」でとらえ、コスプレ衣装が純粋美術に匹敵する高度の鑑賞性を認められるレベルではじめて複製権の侵害になる、ということかと思います*7。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【原則論②】
コスプレイヤーが①で侵害となるコスプレ衣装を着て公衆にでることは、
元ネタのキャラクターを演じているということで
非営利・無報酬が認められなければ上演権の侵害をしているという見解*8があります。
「コスプレ衣装を着て公衆にでて元ネタのキャラクターを演じることが上演といえるのか」という点に関して、個人的には難しいのではと思うものの、(複製の場合もそうですが)元ネタのキャラクターにそっくりであればあるほど上演といえる余地があるのかもしれません。
なお、仮に上演権侵害に該当したとしても、上演権は公衆(不特定または多数)に対して見せることを目的とした上演に関する権利ですが、例外的に非営利・無報酬であれば侵害になりません。
2021/1/31 追記
本記事公開(2016/2/1)後、上記上演権侵害の根拠となる記事(https://lmedia.jp/2014/07/06/54119/)が削除されました。ただ、上演権への言及記事として以下の文献があるため、記載は残しておきます。
- 平成 27 年度著作権委員会第 4 部会「コンテンツ内オブジェクトによるビジネスについての法的諸問題」(パテントVol. 69 No. 12、2016)
- 福井健策「コスプレは著作権侵害か?マリオカート提訴が開くパンドラの箱」
ただ、一方でコスプレショーを上演権ではなく展示権の問題と整理する文献もあり、このあたりは依然として微妙なところです。
上記含め、これらの法的論点のガチ詳細は以下にまとめてあります。
ご興味あれば参照ください。
↓
2021/1/31 追記ここまで
2.ケース別での法的検討
以下、コスプレをして、イベントに出た場合などの法的問題点をケースごとに検討していきます。
なお、ここでは、元ネタのキャラクターの衣装デザインに著作物性があり、
・コスプレ衣装はその複製をしたもの
・コスプレイヤーはそのコスプレ衣装を着て(公衆に出て)上演をしている
という前提になります。
また、コスプレ衣装は自作の場合と業者から購入した場合を分けて検討していきます。
2.1.ケース1 自宅コス
これは一番著作権侵害の可能性が低いでしょう。(少数の友人グループで見せ合うレベルも含め)
以下、コスプレイヤーにとって著作権法上にアウトかセーフか検討していきます。
【自作】
複製権・・・私的複製の範囲内のため問題なし。
上演権・・・公衆への上演ではないため、上演の定義に当てはまらず、問題なし。
⇒セーフ
【業者から購入した場合】
複製権・・・複製しているのはコスプレ衣装販売業者なのでコスプレイヤーは関係ない
上演権・・・自作のときと同じ
⇒セーフ
ただし、上記どちらの状態であっても、コスプレしているところを写真にとってSNSにアップする行為は侵害(公衆送信権等&目的外の私的複製)になる可能性が高いです。
2.2. ケース2 イベントや撮影スタジオでコスプレをすること
【自作】
複製権・・・目的外の私的複製かどうかというかなり難しい論点が生じると考えられます。「イベントや撮影スタジオでのコスプレ」を私的使用の目的といえない場合、コスプレ衣装を自作することが目的外の私的複製として、複製権の侵害となってしまう可能性があります。ただし、私的複製の範囲内であるという考え方も一定程度あるようです。ですので、筆者はグレーな領域と考えます。
上演権・・・公衆*9への上演である前提で、コスプレイヤーが非営利無報酬であれば、問題なし(イベント主催者側の法的問題点は後述)
⇒複製権の問題から、グレー
【業者から購入した場合】
複製権・・・複製しているのはコスプレ衣装販売業者なのでコスプレイヤーは関係ない
上演権・・・自作のときと同じ
⇒セーフ
ただし、ケース1と同じく上記どちらの状態であっても、
①コスプレしているところを写真にとって(自撮含む)SNSにアップする行為は侵害(公衆送信権等&目的外の私的複製)になる可能性が高いです。
※写り込みの制限規定が適用されない前提です。
②コスプレをすることでコスプレイヤーがお金をもらっている場合には、上演権の侵害の可能性があります。
2.3. ケース3 カメコの写真撮影とコスプレイヤーによるROM販売
ここでは、
①カメコがイベントや撮影スタジオでのコスプレイヤーを写真にとること
②それをWEBにUPすること
③それを用いてコスプレイヤーが写真集を制作しROM販売すること
をそれぞれ考えていきます。
①カメコがイベントや撮影スタジオでのコスプレイヤーを写真にとること
自分や友人内で楽しむ範囲で撮影する⇒セーフ(私的複製の範囲内)
②や③の目的で撮影する⇒アウトの可能性が高い(私的複製の範囲外)
② ①の画像をWEBにUPすること
HPやSNSの誰もがわかる状態でアップロードし公開すること⇒アウトの可能性が高い(公衆送信権等)
※Twitterの通常のリプで画像を送ることも厳密にはアウトであろうと考えます。
なお、個別にコスプレイヤーにメールで送る⇒Point to Pointの送信なのでセーフと考えます。
クラウド等のWEBのストレージやアップローダーで特定かつ少数の範囲内で共有すること
⇒これは、クラウドと著作権という極めて難しい(めんどくさい)論点が生じるため、ここでは深入りせず、白よりのグレーとします。(気になる人は調べてね)
③それを用いてコスプレイヤーが写真集を制作しROM販売すること
複製物の譲渡とみなされるため、譲渡権侵害と考えられます。
(衣装の自作や写真の編集、ROMの制作によって複製権や翻案権も合わせて侵害と考えられます。)
※なお、著作権侵害であるROMを購入した者は、転売等の目的での購入以外であれば法的にはセーフです。
3. 衣装販売業者やイベント主催者側の法的問題点
①衣装販売業者の法的問題点
権利者に許諾を取らずにコスプレ衣装を販売する場合は、複製権・譲渡権・みなし行為の侵害になると考えられます。
有名な事件としては「『海賊戦隊ゴーカイジャー』コスプレ衣装事件」があげられるでしょう。
②イベント主催者側の法的問題点
仮にイベントでコスプレイヤーがコスプレを行うことが、上演に当たる場合、(コスプレイヤーは上演権侵害ではかったとしても)イベント主催者*10が上演権の権利侵害になるのではないか、という論点はあろうかと思います。
いわゆるカラオケ法理に始まる行為主体論の論点*11です。
個人的には、そもそもコスプレを演じることが上演権の定義する上演といえるのかという問題点があるため、この問題は深く考える必要はないのではと考えています。
また、イベント主催者側とコスプレイヤーとは利用規約による契約関係が成立している可能性もあり、利用規約に「コスプレイヤーが第三者の著作権を侵害する場合は利用者の自己責任で解決し、イベント主催者は一切責任を負わない」旨の規定をしていた場合に、主催者側の著作権侵害の責任がどう扱われるのかは、気になりますね(調べてない)
4. まとめ
コスプレの著作権上の問題点という内容で殴り書き(読みにくくてすみません。。。)してみましたが、いかがでしたでしょうか。
コスプレは
という現状があります。
しかし、一方でグレーであるが故に、コスプレをはじめとした二次創作は「やりすぎる」と権利者側が権利行使を行います。
「ドラえもん最終話同人誌事件」がその例として挙げられますが、あまりに商業的に成功してしまった場合や二次創作物が本物と間違うくらいにそっくりである場合は危険ということでしょう。
コスプレイヤーは上記を理解したうえで、ファン活動の一環としてコスプレをしてほしいなと思う次第でございます。
*1:
完全オリジナルはコスプレイヤーが自分で考えて制作したものやただのメイド衣装などの元ネタが存在しないようなものであれば、法的問題点はほとんどないでしょう。
*2:本来、キャラクター自体は抽象的なものであり著作権は認められません。漫画やアニメなどに落とし込まれた状態で著作権法上は保護されます。ですが、今回は便宜上、キャラクターが著作権で保護されるような書き方をあえてしています。
*3:例えば、人間ではないアニメのキャラクターを擬人化したコスプレなどがあてはまると思います。(擬人化において、元のキャラクターにはないオリジナリティが追加されているので)。また、これは翻案権侵害だけでなく同一性保持権侵害の問題も生じます。(ここでは深くは立ち入りませんが)
*4:「TRIPP TRAPP事件」以降最近HOTな応用美術/純粋美術の論点が生じると考えられます。この後の小倉先生の考え方にも一部かぶりますが、キャラクターの衣装デザインを美術の著作物(の中の応用美術)としてとらえ、純粋美術に匹敵する高度の鑑賞性を認められるレベルであれば、著作物性ありとして保護されるとする見解に個人的には賛同したいです。
*5:http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2013/12/post-787c.html
*6:さらに小倉先生は、この考え方では、『人を複製物という「物」として扱っていいのか』という問題が生じるとのべています。
*7:この考え方だと複製権侵害のハードルが高すぎると考える人もいるかと思われます。
*8:https://lmedia.jp/2014/07/06/54119/
*9:理屈上、特定かつ少数への上演であればコスプレイヤーがお金をもらっていても合法ですが、著作権法上の「公衆」の定義は広く解釈されている(社交ダンス教室事件等)ため、特定かつ少数にあたるケースはかなり限定されると思います。
*10:主催者が、なにかしら営利性があり報酬の支払を受けているという想定です。
*11:もしくは、カメコが写真撮影(複製)をする場を提供するイベント主催者側の法的責任(イベント主催者を複製権の侵害主体とすることはできるのか)の論点もあろうかと。個人的には侵害主体にはなりえないと思うのですが、、、
*12:著作権侵害でも刑事事件に発展しにくいのは親告罪である点も大きいと思われます。TPPによる著作権法の改正は海賊版のみ非親告罪となる方向といわれていますが、どのような条文の文言で改正されるのかは不明です。