【感想】BUISINESS LAW JOURNAL(2016年2月号)
いまさらながらビジロー2月号読みました。
BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2016年 2月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: レクシスネクシス・ジャパン
- 発売日: 2015/12/21
- メディア: 雑誌
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主に見たのは以下ですね。
①法務のためのブックガイド2016
②法務部門 CLOSEUP
③TPP協定の概要と実務対応
④契約書審査・差のつくポイント
以下とりとめもなく感想を
①法務のためのブックガイド2016
ビジロー見始めたの最近なのですが、いいですねこの企画。
さっそく「特許調査入門」と「事業をサポートする知的財産実務マニュアル」は購入させていただきました。
「業務委託契約書の作成と審査の実務」と「システム開発紛争ハンドブック」「アプリ法務ハンドブック」はほしいものリストにいれました。
お金に余裕ができたら購入しようと思います。
②法務部門 CLOSEUP
ファンケルって法務5人でまわしてるんですね。
契約書管理システムってどんなやつなんですかね。私気になります。
③TPP協定の概要と実務対応
実務に影響が出る部分を網羅的に記載されていると感じました。
④契約書審査・差のつくポイント
再委託ですね。復習になりました。
ちなみにこれって本になったりしないんですかね?
なったら購入検討します。
ところで、カジノ専門弁護士なんて海外にはいるんですね。
すごくすごくバブリーな匂いがします。
コスプレの著作権法上の問題点~詳細版~
ブログ引越ししました。
最近コスプレと著作権で何かと話題になることが多い気がしたので、「コスプレの著作権法上の問題点」ということで法的問題点をまとめてみました。
(2017/5/4追記)マリカー事件に関する考察はこちら
※この記事の意図は法的問題点の提示であり、決してコスプレを始めとした二次創作を否定するつもりで書いているわけではありません。(むしろ二次創作文化に肯定的な立場です。いいぞもっとやれな立場)
ただ、著作権をいまいち理解できていないが故にトラブルになる事例も多く、コスプレをする側(以下、「コスプレイヤー」)やそれを撮影する側(以下、「カメコ」)もこういう法的問題点があるということを理解してほしいという意図で書いています。
もっというと、これだけ問題点があるけど、権利者のお目こぼし(黙認)によってなんとかなっているんだよということを理解してほしいということです。
※筆者は知財を現在勉強していますが、士業の資格をもっているわけでもないそのへんによくいるニワカ知財クラスタですので、詳しく知りたい方は専門家にご相談下さい。また、筆者が間違って理解している部分もあるかもしれませんので、その際はご指摘下さいませ。
【目次】
1 コスプレの法的問題点~原則論~
前提条件は、アニメや漫画の登場人物(キャラクター)のコスプレ衣装です*1
【原則論①】
アニメや漫画の登場人物(キャラクター)のコスプレ衣装を権利者に無許可で制作することは、
そのキャラクター*2(の衣装デザイン)を有形的に再製しているので、
原則、複製権(21条)または制作者のオリジナリティも加わっていれば翻案権*3(27条)の侵害になります。
これは、業者がコスプレ衣装を制作していれば業者が侵害(公式に許諾を得ている場合を除く)、
個人(コスプレイヤーの自作も含む)で私的使用の範囲を超えて制作をしていればその個人が侵害したことになります。(個人で制作した場合の例外規定があるのは後述!)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【細かい注意点】
これは元のキャラクター(の衣装デザイン)に著作物性が認められること(衣装に著作権法上の保護が認められるほどオリジナリティがある状態*4)が前提です。
ただ、上記は個別具体的に判断されるため、一概に著作物性の有り/無しは判断できません。仮に、著作物性がなしとされ場合、その後の利用は自由(コスしてもいろいろしても問題ない)ということになります。
また、どのレベルでのコスプレ衣装を制作すると「複製」を行ったといえるかも議論の余地があるようです。たとえば、小倉先生のブログ*5によるとアニメキャラクターの衣装デザインの法的考え方として、以下の2つがあると述べています。
1つは、衣装デザインがそのアニメキャラクターの「表現上の本質的特徴部分」にあたるといえる場合に限り、それを直接感得しうるような形状の衣装を作成することは「複製」に当たるとする考え方です。ただし、アニメキャラクターの表現上の本質的特徴部分は、顔立ちや体つきにあるのが通常なので、たいていの場合衣装デザインが似ていると言うだけでは、元のアニメキャラクターの「表現上の本質的特徴部分」を直接感得できることにはならないとする考え方です。*6
⇒衣装デザインをキャラクターの一部として考え、元ネタのキャラクターの衣装デザインがそのキャラクターの表現上の本質的特徴部分であるといえるときに、その本質的特徴部分を直接感得しうるようなコスプレ衣装を制作したときに複製権の侵害になる、ということでしょうか。
もう1つは、衣装のデザインの類似性は基本的に意匠法で対処すべきなので、アニメキャラクターの衣装デザインと類似する衣装が製作されたとしても著作物としての利用がなされていないので原則として著作権侵害とすべきではないが、例外的に、その衣装が純粋美術に匹敵する高度の観賞性を認められるようなものであった場合には、美術の著作物として有形的に再製されたとする考え方です。
⇒こちらは衣装デザインを「単体」でとらえ、コスプレ衣装が純粋美術に匹敵する高度の鑑賞性を認められるレベルではじめて複製権の侵害になる、ということかと思います*7。
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【原則論②】
コスプレイヤーが①で侵害となるコスプレ衣装を着て公衆にでることは、
元ネタのキャラクターを演じているということで
非営利・無報酬が認められなければ上演権の侵害をしているという見解*8があります。
「コスプレ衣装を着て公衆にでて元ネタのキャラクターを演じることが上演といえるのか」という点に関して、個人的には難しいのではと思うものの、(複製の場合もそうですが)元ネタのキャラクターにそっくりであればあるほど上演といえる余地があるのかもしれません。
なお、仮に上演権侵害に該当したとしても、上演権は公衆(不特定または多数)に対して見せることを目的とした上演に関する権利ですが、例外的に非営利・無報酬であれば侵害になりません。
2021/1/31 追記
本記事公開(2016/2/1)後、上記上演権侵害の根拠となる記事(https://lmedia.jp/2014/07/06/54119/)が削除されました。ただ、上演権への言及記事として以下の文献があるため、記載は残しておきます。
- 平成 27 年度著作権委員会第 4 部会「コンテンツ内オブジェクトによるビジネスについての法的諸問題」(パテントVol. 69 No. 12、2016)
- 福井健策「コスプレは著作権侵害か?マリオカート提訴が開くパンドラの箱」
ただ、一方でコスプレショーを上演権ではなく展示権の問題と整理する文献もあり、このあたりは依然として微妙なところです。
上記含め、これらの法的論点のガチ詳細は以下にまとめてあります。
ご興味あれば参照ください。
↓
2021/1/31 追記ここまで
2.ケース別での法的検討
以下、コスプレをして、イベントに出た場合などの法的問題点をケースごとに検討していきます。
なお、ここでは、元ネタのキャラクターの衣装デザインに著作物性があり、
・コスプレ衣装はその複製をしたもの
・コスプレイヤーはそのコスプレ衣装を着て(公衆に出て)上演をしている
という前提になります。
また、コスプレ衣装は自作の場合と業者から購入した場合を分けて検討していきます。
2.1.ケース1 自宅コス
これは一番著作権侵害の可能性が低いでしょう。(少数の友人グループで見せ合うレベルも含め)
以下、コスプレイヤーにとって著作権法上にアウトかセーフか検討していきます。
【自作】
複製権・・・私的複製の範囲内のため問題なし。
上演権・・・公衆への上演ではないため、上演の定義に当てはまらず、問題なし。
⇒セーフ
【業者から購入した場合】
複製権・・・複製しているのはコスプレ衣装販売業者なのでコスプレイヤーは関係ない
上演権・・・自作のときと同じ
⇒セーフ
ただし、上記どちらの状態であっても、コスプレしているところを写真にとってSNSにアップする行為は侵害(公衆送信権等&目的外の私的複製)になる可能性が高いです。
2.2. ケース2 イベントや撮影スタジオでコスプレをすること
【自作】
複製権・・・目的外の私的複製かどうかというかなり難しい論点が生じると考えられます。「イベントや撮影スタジオでのコスプレ」を私的使用の目的といえない場合、コスプレ衣装を自作することが目的外の私的複製として、複製権の侵害となってしまう可能性があります。ただし、私的複製の範囲内であるという考え方も一定程度あるようです。ですので、筆者はグレーな領域と考えます。
上演権・・・公衆*9への上演である前提で、コスプレイヤーが非営利無報酬であれば、問題なし(イベント主催者側の法的問題点は後述)
⇒複製権の問題から、グレー
【業者から購入した場合】
複製権・・・複製しているのはコスプレ衣装販売業者なのでコスプレイヤーは関係ない
上演権・・・自作のときと同じ
⇒セーフ
ただし、ケース1と同じく上記どちらの状態であっても、
①コスプレしているところを写真にとって(自撮含む)SNSにアップする行為は侵害(公衆送信権等&目的外の私的複製)になる可能性が高いです。
※写り込みの制限規定が適用されない前提です。
②コスプレをすることでコスプレイヤーがお金をもらっている場合には、上演権の侵害の可能性があります。
2.3. ケース3 カメコの写真撮影とコスプレイヤーによるROM販売
ここでは、
①カメコがイベントや撮影スタジオでのコスプレイヤーを写真にとること
②それをWEBにUPすること
③それを用いてコスプレイヤーが写真集を制作しROM販売すること
をそれぞれ考えていきます。
①カメコがイベントや撮影スタジオでのコスプレイヤーを写真にとること
自分や友人内で楽しむ範囲で撮影する⇒セーフ(私的複製の範囲内)
②や③の目的で撮影する⇒アウトの可能性が高い(私的複製の範囲外)
② ①の画像をWEBにUPすること
HPやSNSの誰もがわかる状態でアップロードし公開すること⇒アウトの可能性が高い(公衆送信権等)
※Twitterの通常のリプで画像を送ることも厳密にはアウトであろうと考えます。
なお、個別にコスプレイヤーにメールで送る⇒Point to Pointの送信なのでセーフと考えます。
クラウド等のWEBのストレージやアップローダーで特定かつ少数の範囲内で共有すること
⇒これは、クラウドと著作権という極めて難しい(めんどくさい)論点が生じるため、ここでは深入りせず、白よりのグレーとします。(気になる人は調べてね)
③それを用いてコスプレイヤーが写真集を制作しROM販売すること
複製物の譲渡とみなされるため、譲渡権侵害と考えられます。
(衣装の自作や写真の編集、ROMの制作によって複製権や翻案権も合わせて侵害と考えられます。)
※なお、著作権侵害であるROMを購入した者は、転売等の目的での購入以外であれば法的にはセーフです。
3. 衣装販売業者やイベント主催者側の法的問題点
①衣装販売業者の法的問題点
権利者に許諾を取らずにコスプレ衣装を販売する場合は、複製権・譲渡権・みなし行為の侵害になると考えられます。
有名な事件としては「『海賊戦隊ゴーカイジャー』コスプレ衣装事件」があげられるでしょう。
②イベント主催者側の法的問題点
仮にイベントでコスプレイヤーがコスプレを行うことが、上演に当たる場合、(コスプレイヤーは上演権侵害ではかったとしても)イベント主催者*10が上演権の権利侵害になるのではないか、という論点はあろうかと思います。
いわゆるカラオケ法理に始まる行為主体論の論点*11です。
個人的には、そもそもコスプレを演じることが上演権の定義する上演といえるのかという問題点があるため、この問題は深く考える必要はないのではと考えています。
また、イベント主催者側とコスプレイヤーとは利用規約による契約関係が成立している可能性もあり、利用規約に「コスプレイヤーが第三者の著作権を侵害する場合は利用者の自己責任で解決し、イベント主催者は一切責任を負わない」旨の規定をしていた場合に、主催者側の著作権侵害の責任がどう扱われるのかは、気になりますね(調べてない)
4. まとめ
コスプレの著作権上の問題点という内容で殴り書き(読みにくくてすみません。。。)してみましたが、いかがでしたでしょうか。
コスプレは
という現状があります。
しかし、一方でグレーであるが故に、コスプレをはじめとした二次創作は「やりすぎる」と権利者側が権利行使を行います。
「ドラえもん最終話同人誌事件」がその例として挙げられますが、あまりに商業的に成功してしまった場合や二次創作物が本物と間違うくらいにそっくりである場合は危険ということでしょう。
コスプレイヤーは上記を理解したうえで、ファン活動の一環としてコスプレをしてほしいなと思う次第でございます。
*1:
完全オリジナルはコスプレイヤーが自分で考えて制作したものやただのメイド衣装などの元ネタが存在しないようなものであれば、法的問題点はほとんどないでしょう。
*2:本来、キャラクター自体は抽象的なものであり著作権は認められません。漫画やアニメなどに落とし込まれた状態で著作権法上は保護されます。ですが、今回は便宜上、キャラクターが著作権で保護されるような書き方をあえてしています。
*3:例えば、人間ではないアニメのキャラクターを擬人化したコスプレなどがあてはまると思います。(擬人化において、元のキャラクターにはないオリジナリティが追加されているので)。また、これは翻案権侵害だけでなく同一性保持権侵害の問題も生じます。(ここでは深くは立ち入りませんが)
*4:「TRIPP TRAPP事件」以降最近HOTな応用美術/純粋美術の論点が生じると考えられます。この後の小倉先生の考え方にも一部かぶりますが、キャラクターの衣装デザインを美術の著作物(の中の応用美術)としてとらえ、純粋美術に匹敵する高度の鑑賞性を認められるレベルであれば、著作物性ありとして保護されるとする見解に個人的には賛同したいです。
*5:http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2013/12/post-787c.html
*6:さらに小倉先生は、この考え方では、『人を複製物という「物」として扱っていいのか』という問題が生じるとのべています。
*7:この考え方だと複製権侵害のハードルが高すぎると考える人もいるかと思われます。
*8:https://lmedia.jp/2014/07/06/54119/
*9:理屈上、特定かつ少数への上演であればコスプレイヤーがお金をもらっていても合法ですが、著作権法上の「公衆」の定義は広く解釈されている(社交ダンス教室事件等)ため、特定かつ少数にあたるケースはかなり限定されると思います。
*10:主催者が、なにかしら営利性があり報酬の支払を受けているという想定です。
*11:もしくは、カメコが写真撮影(複製)をする場を提供するイベント主催者側の法的責任(イベント主催者を複製権の侵害主体とすることはできるのか)の論点もあろうかと。個人的には侵害主体にはなりえないと思うのですが、、、
*12:著作権侵害でも刑事事件に発展しにくいのは親告罪である点も大きいと思われます。TPPによる著作権法の改正は海賊版のみ非親告罪となる方向といわれていますが、どのような条文の文言で改正されるのかは不明です。