「森・濱田松本法律事務所の先生方が書いた信頼できる入門書」として個人的におすすめできる一冊でした。
題名に「改正個人情報保護法」とありますが、改正法だけでなく個人情報保護法全体をカバーする内容になっています。
目次は下記です。
Part1:個人情報保護法を知る
現在の個人情報保護法ができるまでPart2:個人情報の定義と規則
個人情報とはどういうものか?Part3:個人情報をいかにして扱うか?
個人情報の取得と管理、利用目的の表示、漏えい時の対応Part4:個人データの第三者提供
同意原則、個人データの取り扱いの委託、共同利用、越境移転等Part5:どう守る? 個人情報
保有個人データの公表、開示等の請求
特徴
本書の特徴は、以下です。
- フルカラーかつ図が豊富でイメージしやすい
- 必要最低限の内容を150ページ程度でまとめてくれている
- よく議論になる細かい論点も一部カバー
フルカラーかつ図が豊富でイメージしやすい
「超入門書」となっているようにフルカラーかつ図が豊富に記載されています。見開き1ページで左が解説文で右が図という形式になっており、(よくある入門書形式ではありますが)初学者にとってはわかりやすいと感じます。
本書22、23ページ
↑初学者がよく間違える「個人情報の範囲」に関する解説。
本書34、35ページ
↑個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報の違いをデータベース形式で記載しているのでエンジニアはこれの方が理解しやすい気がします。
個人情報保護法の概要をコンパクトにまとめてくれている
約150ページ(半分は図なので解説文自体は75ページ程度)でざっくり個人情報保護法の概要を理解できるようになっています。
「個人情報保護法の基礎を1時間で解説する講義」を聴いている感じで読めると思います。
コンパクトである一方で、個人情報の範囲や第三者提供の提供元基準等、初学者が間違いやすい箇所(ぼくのかんがえたさいきょうの個人情報保護法、になりやすい部分)はしっかりフォローされています。
本書134、135ページ
↑第三者提供の提供元基準に関する解説。
よく議論になる細かい論点も一部カバー
上記以外でも、実務で迷うことも多い「位置情報は単体で個人情報か」や「混ぜるな危険」に関する解説も(ざっくりですが)入っていたりします。
注意点
「超入門書」となっているのもあり、解説文において該当条文やガイドラインの番号等はほとんど記載されていません。
また、初学者が60分では読み切ってかつ理解できるかというと...ちょっとなんとも言えないかなと感じます。
本書をおすすめしたい対象者
本書をおすすめしたい対象者としては下記かなと思います。
本書の特徴を踏まえると、事業部向けの1冊目として最適かなと個人的に感じます。kindle版がちゃんとあるのも地味にポイント高いです。
一方で、法務メンバー向けの1冊目としては
- 条文もしっかり載っている
- 本書よりも広範囲かつ詳細にカバーしている
点から岡村先生の「個人情報保護法の知識 第5版」を個人的にはおすすめしたいのですが、それより前に1冊読んでおきたい場合には本書をおすすめしたいです。
また、法務メンバー向けとしては、事業部向けの研修資料を作成するうえで非常に参考になる書籍だと思います。