【書評】メーカー取引の法律実務Q&A~非メーカー法務が少し読んでみた~
はしがきに
本書の構成として、第1章から第3章はメーカー取引の典型的な時系列に沿って、契約成立段階、契約履行段階、契約履行後の段階に分け、第4章以降はテーマごとに分けて設問をまとめた。
はしがきより
とあるように、メーカー取引において発生する法的問題を段階ごとにQAが整理されています。(債権法改正による影響についてもメインではありませんが言及されています。)
なお、目次は下記です。
第1章 契約成立段階
第2章 契約履行段階
第3章 契約履行後の段階
第4章 債権債務管理
第5章 代理店関係
第6章 海外との取引
第7章 その他
kanekoはメーカー系の法務の経験はない(メーカーでの営業経験は少しだけありますが、、、)ので、詳しい感想は書けないのですが非メーカーの視点から興味深いと感じた点を以下簡単にメモしておきます。
なお、すでに偉大なms-utenaT先輩が詳細な書評を書いてくれていて、
契約(書)にかかわる書籍はあまたあるが、全方位向けの内容では食い足りないし、知財、独禁法、下請法に特化した書籍もあるが、実務では使い勝手がいまひとつ。毎日の業務で営業や購買や工場、サービスといった各部門から遠慮も配慮もなく投げられてくる問い合わせを捌くための参考書はないかと思っているメーカー法務担当者もいるのではないか。そんなときに本書籍である。
ms-utenaT 企業法務マン迷走記2:とにかくデスクに置くのだ「メーカー取引の法律実務Q&A」
とオススメされているので、特にメーカー法務の方は参考にされるといいと思います。
非メーカー法務でも勉強になる点はいっぱい
第1章の「契約成立段階」等の内容はメーカー法務に限らず、参考になる内容だと感じました。
たとえば、以下のような論点については、非メーカー法務でも勉強になりました。
※()内はkanekoのどうでもいい呟きであり本書内に言及があるわけではありません。
- 注文請書を発行せずに履行した取引(あるある)
- 契約書の返送がない状態でなされた取引(「はよ送ってこい」って言われたので急ぎで契約書2部送ったのに一向に1部返ってこないのよくありますよね。遠目)
- 議事録の記載による発注の有効性(議事録すらない時もありますよね)
- 担当者名での発注(印も個人印だったりするやつ)
- サインの印字による注文請書の作成(意外とあんま見たことないかも)
- 契約書の有効期間に狭間がある場合のその期間中の取引条件(これこの前あった)
- 条件を明示せずに行った依頼に対し過分と思われる提供・請求がなされた場合の対応(これに似た事例を聞いたことがある)
- 各自が自社所定の仕様書を送付した場合の契約内容(お互い自社指定の書類で対応しなきゃいけない時とかにありそう)
- 取引基本契約書上の対象取引の表記と実際の取引の相違(メーカーと取引するときによくある。苦笑)
- 矛盾する同種契約の位置づけ(あるある)
- 誤った単価を伝えたことに対応してなされた発注の有効性(営業の方がやらかした場合に相談くるやつだ。)
- 有効期限を徒過した見積書に基づく発注(実は深く考えたことなかった)
- 海外の法人に対する委託への下請法適用の有無(これ素朴な疑問として思ってた)
- 議事録の記載による変更合意(トラブったときに問題になるやつ)
メーカー法務特有の論点(製造物責任等)もありますので、非メーカー法務の方にオススメできるかは微妙ではありますが、メーカー法務の方は買って損はないと思います。(説得力がない