Nobody's 法務

略称は「ノバ法」。知財、個人情報、プライバシー、セキュリティあたりを趣味程度に勉強している元企業ホーマーのまとまりのない日記。あくまで個人的な見解であり、正確性等の保証はできませんので予めご了承くださいませ。なお、本ブログはGoogle Analysticsを利用しています。

【メモ】今月のビジネスロージャーナル

 

 

どうでもいいのですが、このツイートとても好きです。

 

というわけで最近ブログ更新できていなかったので更新。

 

今月のビジネスロージャーナルのうち、いくつか気になった記事の感想をメモ。

Business Law Journal(ビジネスロー・ジャーナル)2018年 06 月号 [雑誌]

Business Law Journal(ビジネスロー・ジャーナル)2018年 06 月号 [雑誌]

 

 

↓メモした記事

 

 

【あの商品を支える知財法務のチカラ 「脱臭炭」】

エステーの法務の方へのインタビュー。

気になったのは「この商品の肝ともいえるゼリー状の炭に関する特許出願明細書は、急いで作成し、弁理士に相談する余裕もなくそのまま出願したぐらいです。」という1文。

どの特許だろうと思って調べてみました。

 

J-PlatPatで

「権利者:エステー」and「全文:炭」で雑に検索し、2000年頃に出願された特許を閲覧してみると、いくつか該当しそうなのがヒット。

「特開2001-157706」あたりかな。

出願内容はこちら

 

請求項1が「 炭素系またはシリカ系吸着剤をゲル中に分散してなるゲル状脱臭剤」なのでこれかなぁと。(間違ってるかもしれません。)

 

ちなみに請求項は修正されていますが、2010年に特許になっている模様(特許第4562838号)。10年くらいかかったんですね。

 

 

【上場会社のD&O保険の論点と社内手続】

オリックのポートフォリオ管理部の方の記事。

D&O保険って

  • 支払限度額どうするか
  • 補償範囲をそうするか
  • カバーする地域的範囲をどうするか(現地証券を発行するか)

は本当に悩ましいと個人的に感じます。

(決裁権限のある(可能性の高い)役員の方々は自分の身を守るためのものでもあるので「高ければ高い方がいい」というのでしょうが・・・)

「各社の個別事情が反映されるものであり、一概に一般化できない部分も少なくない」と書かれているとおり、企業の業種・規模等によって変わってくるとは思いますが、適切な落としどころを見極めていきたいものです。

「ふむふむ」と思った点は以下3点

  • 支払限度額が適切かどうか、最終的な判断のよりどころは「もし株主や投資家にD&O保険の情報を開示した場合に、理論性前途説明できるかどうか」
  • 支払限度額は一般的な東証一部企業だと7~10億。意識高いと50億以上
  • 国によっては現地証券発行していないとマズイ
  • 米国型D&O保険が必ずしも適切ではない(比較するといい保険に見えてしまうけど不要な補償も結構ある。内枠方式だとクリティカルではない部分で貴重な支払限度額を使ってしまうかも。)

 

外国人役員がいる場合は外国基準を求められるケースもあると思うので難しいよなぁと。

ちなみに、保険料の役員個人負担が一定条件の下、会社負担にできるようになったのは画期的だと当時思いました。外国人役員がいると大変なんですよねこれ(遠い目

 

【AIによる個人情報の取扱いの留意点】

「ふむふむ」と思った点は以下

  • 取得時には要配慮個人情報を含まないが、AIの推論の結果、出力される個人情報に要配慮個人情報が含まれる場合は要配慮個人情報の取得には該当しないと思われるが、実務的には同意とっておくのが無難
  • 利用目的の特定(個人情報保護法15条1項)は、一連の取扱いにより最終的に達成しようとする目的を特定することを求めているため、「AIを用いる」というここの取扱いのプロセスを利用目的として特定することは必ずしも求めていないが、「AIを用いる」ことが事業の重要な内容となっている場合には利用目的として含めるのが無難。
  • AIによる推論の結果(評価)自体は訂正等請求の対象にならない。

 

【債権法改正がシステム・ソフトウェア業界に与える影響】

今回は「定型約款の規定が利用規約にどう影響を与えるのか」という点の解説。

この分野は民法改正の本を読んでもあまり記載がされていない部分なので助かります。利用規約の内容をどうするか(不当条項が含まれているか)、同意はどのように取得するのか、変更時はどのような手順をとるか、といった点は個人情報保護法における同意の取得の話と合わせて考える必要ありますよね。

利用規約を作成する側としては、ここも悩ましいところです。(裁判例も少ないですし)

 

企業会計法】

ICOの会計処理」がテーマなので興味深く拝見しました。

ただ、前提となる会計知識の不足を感じました。勉強しよう。。。

 

【法務部門における品質確保・向上の方法論】

個人的にここに課題感をもっているので、参考になりました。第1回から読み直そうかな。

 

 

ところで、なんか今月号、T○Iの人の記事が多くないですか?気のせい?笑

 

著作権法の平成30年改正案を流し読みしてみた

どうも、3月の繁忙期を乗り越えられることができるのか不安でいっぱいなkanekoです。

 

さて、著作権法の改正案が閣議決定したとのニュースに接しましたので、ざっと目を通しました。

mainichi.jp

 

法律案はコチラ

 

※以下、kanekoの頭の整理のためにまとめたものですので、正確ではない記述がみられる可能性があります。誤りのある点があればご教示頂けますと幸いです。

 

改正の概要

概要は以下のよう。

f:id:kanegoonta:20180227192424p:plain

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/02/23/1401718_001.pdf

 

ふむふむ。

個人的には①の「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」がやはり気になりました。

 

というわけで改正案第30条の4、第47条の4、第47条の5を読んでみました。

 

一通り条文を読んだkanekoの感想

f:id:kanegoonta:20180227200324j:plain

大川ぶくぶポプテピピック」のLINEスタンプより

 

 

はい。すみません。条文だけだとよくわからんとです。

 

やはり審議会の内容等を確認しないとですよね。。。

 

審議会の内容等

平成29年4月文化審議会著作権分科会「文化審議会著作権分科会報告書」

あとは改正内容をわかりやすくまとめてくれている自民党の赤池議員のブログ(以下赤池ブログ)をざっと読んでみました。

 

 

まず、今後の技術革新に対応できる著作権の制度設備を行うという目的のもと、権利制限規定を以下の3層に分類したようです。

f:id:kanegoonta:20180301002918j:plain

赤池ブログより(なお、元ネタは文化庁の資料のよう)

 

このうち、第1層と第2層について、今回の改正案に組み込まれているということと理解しました。

で、第1層と第2層の例としては、以下のようなものがあげられると

f:id:kanegoonta:20180301003722j:plain

赤池ブログより(なお、元ネタは文化庁の資料のよう)

 

第1層については、今回「改正案第30条の4」と「改正案第47条の4」があてはまり、

第2層については、「改正案第47条の5」があてはまるようですね。

 

なお、赤池ブログには

以上については、予見可能性を確保するために、文化庁では法改正後にガイドラインを整備することとしています。

と書かれていたため、文化庁の今後のガイドラインの内容にも注目ですね。

 

というわけで条文を改めて読んでみる

ここで新ためて条文を読んでみます。

 

まずは改正案第30条の4

※以下、引用部分の太字はkanekoによる。

 

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四

著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類そ
の他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程
における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合 

 

「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」かぁ。

さすが柔軟な権利制限規定。わかりにくい(苦笑)

 

 2号に「情報解析」が含まれるため、現行法の47条の7も包含されているという理解でいいんすかね?もしくは改正案47条の5とセットで包含されているんですかね?

どちらにせよ、機械学習を行う際に現行法の47条の7でネックだった「統計的」の要件も消されているし、役割分担を含む複数事業者による機械学習の場合も許容されるような気がします。

(現行法47条の7の但し書きについては、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」ということなんだろうなぁ)

 

あとソフトウェアの調査解析(リバースエンジニアリング)もこの規定でカバーされるみたいですね。

 

続いて改正案第47条の4

 

(電子計算機における著作物の利用に付随する利用等)
第四十七条の四

電子計算機における利用(情報通信の技術を利用する方法による利用を含む。以下この条において同じ。)に供される著作物は、次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を円滑又は効率的に行うために当該電子計算機における利用に付随する利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合において、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑又は効率的に行うために当該著作物を当該電子計算機の記録媒体に記録するとき。
二 自動公衆送信装置を他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、当該他人の自動公衆送信の遅滞若しくは障害を防止し、又は送信可能化された著作物の自動公衆送信を中継するための送信を効率的に行うために、これらの自動公衆送信のために送信可能化された著作物を記録媒体に記録する場合
三 情報通信の技術を利用する方法により情報を提供する場合において、当該提供を円滑又は効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うことを目的として記録媒体への記録又は翻案を行うとき。


2  電子計算機における利用に供される著作物は、次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を行うことができる状態を維持し、又は当該状態に回復することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 記録媒体を内蔵する機器の保守又は修理を行うために当該機器に内蔵する記録媒体(以下この号及び次号において「内蔵記録媒体」という。)に記録されている著作物を当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、及び当該保守又は修理の後に、当該内蔵記録媒体に記録する場合
二 記録媒体を内蔵する機器をこれと同様の機能を有する機器と交換するためにその内蔵記録媒体に記録されている著作物を当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、及び当該同様の機能を有する機器の内蔵記録媒体に記録する場合
三 自動公衆送信装置を他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、当該自動公衆送信装置により送信可能化された著作物の複製物が滅失し、又は毀損した場合の復旧の用に供するために当該著作物を記録媒体に記録するとき。

 

相変わらずなげぇよ(苦笑

現行法49条の5や49条の9に近い表現が見られるのでこの規定をより広くしたものと理解しました。(途中で条文読むの疲れた。)  

 

最後に改正案第47条の5

 

(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)

第四十七条の五
電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆への提供又は提示(送信可能化を含む。以下この条において同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供提示著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物に係る公衆への提供又は提示が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。
二 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。
三 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの

2 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供提示著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うこと
ができる。ただし、当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 

なげぇよ(2回目

 

例として、所在検索サービス(書籍検索、テレビ番組検索、街中風景検索、楽曲検索)や情報解析サービス(論文剽窃検出、評判情報分析、電車遅延情報、医療支援サービス)が挙げられている部分ですね。

ちなみに、機械学習のアウトプットがデータセットに含まれる(公衆提示)著作物の表現上の本質的特徴を直接感得できる場合もアウトプットの具体的な表現によっては軽微利用になり得るという理解でいいんですかね?

 

この規定は「政令で定めるもの」と一部政令に逃げている部分もあるようですので、要注意ですね。

ところで 「国民生活の利便性の向上に寄与するもの」ってなかなか壮大だなぁ。

 

改めて読んでみた結果

対象となる行為例を確認して、なんとなくは理解できたけどやっぱりよくわからんです。

 

 法務のはしくれとしての感想

個人的に柔軟な権利制限規定の創設には肯定的な意見を持っています。

が、例として列挙されている行為以外の場合にこの条文の当てはめを検討するとなると骨が折れそう(というか条文の内容を理解するだけでも苦労しそう・・・)

というのが1法務のはしくれとしての所感です。

※もちろん、リスクテイクしていけるベンチャー企業にとってはとてもいい条文になると思いますし、ベンチャー企業ではなくても、新サービスを始める際に検討する条文としてかなり使える気がします(し活用を期待したいです)。

 

自分の中での結論 

結局、文化庁によるガイドラインや実務家・学者による解説を待とうと思いました(小並

 

きっと基本書やコンメンタールの著者の方々は改訂に向けてすでにアップ(検討)を始めていることでしょうし!

 

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8/10 追記

 ちゃんと調べた。

kanegoonta.hatenablog.com

 

【書評】はじめての著作権法~著作権超入門書~

 

はじめての著作権法 (日経文庫)

はじめての著作権法 (日経文庫)

 

 

著者は森・濱田松本法律事務所の池村先生。

 

本書は月刊コピライトに連載されていた、「ざっくりさくっと著作権」がベースとなってる著作権初心者向けの書籍(新書レベルの入門書)です。

 

新書レベルの著作権入門書といえば、福井健策先生の「18歳の著作権入門」という(個人的)名著があり、本書も読書層としては被るのかもしれませんが、テイストが異なっており、「18歳~」以外での新書レベルの入門書としては本書をおすすめできると思います。

 

【ポイント】

本書のポイントは、やはり「わかりやすくしつつも必要最低限の基礎知識を入れ込んでいること」です。

具体的事例(裁判例含む)を挙げながら、説明をされているので著作権初心者でも著作権法全体のイメージを掴むことができます。

 

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※複製と翻案の違い

 

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※実際に著作権侵害かどうか争われた事例

 

また、本書は「著作権が多くの国民にとって身近なキーワードになった一方で、著作権法の基本的な知識はまだまだ浸透してないことがある(p5)」という著者の問題意識がベースになっています。

それは、

ある小説がありきたりのストーリーで全然感動しないとか、ある絵画が下手くそで見るに堪えないとか、ある音楽が耳障りで不快であるとか、あるゲームがクソゲーだとかいったような、「作品としての価値や評価」は、著作物かどうかとはまったく関係が在りません。(p31)

であったり

世間ではアイディアしか共通していない場合も含めて、あたかも著作権侵害であるかのように、「この作品はあの作品のパクリだ」なんて形で炎上することも少なくありませんが、是非冷静に判断をしていただきたいと思います。(p128)

といった記述からも問題意識が見て取れます。

たしかに、ネット上では少し似ているだけで「著作権侵害だ」といわれて炎上するケースが増えてきているように思えます。

(直近でも某ラノベが某テニスマンガのパクリだと炎上し、結果としてラノベの刊行が中止に追い込まれていたりしますね。)

もちろん、著作権法の観点からは合法であったとしても倫理的には問題があるケースはあり得るとは思うものの、私も著者の問題意識には同意見ですので、多くの人に本書が読まれるといいなと思うところです。

 

【その他個人的に興味深かった点】

  • 加戸守行「著作権法逐条講義」を「カトチク」と略す
  • 群馬出身の池村先生、グンマ愛が強すぎて「群馬あるある」という書籍を出版する

⇒探したらガチだった。

群馬あるある|TOブックス

  • 文化庁が「著作権者不明の場合の裁定制度」というシュールな動画を作成している

⇒探したらガチだった。

natalie.mu

【書評】広告法~広告業界法務のスタンダード本?~

 

広告法

広告法

 

 

Business Law Journalのブックガイド2018でも言及されていた書籍ですね。

 

著者は電通法務マネジメント局の方々*1

 

本書は、はしがきに

すでに法規制ごとにすばらしい解説書が多数出版されていますので、全般的な解説はそちらに譲ることとし、本書ではあくまで概説にとどめ、主として広告ビジネスの視座から法規制をとらえ直すことに注力しています。

と書かれているとおり、広告ビジネス実務に焦点をあてて法的解説がなされています。

 

広告ビジネスに法規制に関する書籍としては、代表的なものとしてJARO「広告法務Q&A」があるかと思いますが、あくまでQ&A形式となっているため、全体的な法規制については理解しにくい構造になっていると個人的には感じており、その点においては本書の方が最適かなぁと思うところです。 

 

  • 広告業界に入りたての法務部員
  • (広告主側になる)B to C企業の法務部員
  • 間接的に広告業界に関わる企業の法務部員

にとっては「使える書籍」になるのではと思います。

 

本書の中身を見ていきますと、まず第1編にて広告実務の解説がされています。

 

広告実務の流れ、そこで必要となる契約、関係する法令等がざっくりわかるようになっています。

 

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※一般的な広告実務の流れ

 

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※広告を作成するにあたり、関係する企業と必要となる契約の一覧表。

 

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※ケースごとに関係する法令の一覧表。

 

その上で第2編以降は関係する各法律の解説がされています。

特に知的財産法と景品表示法の割合が多いものの、個人情報保護法*2や屋外広告法、公職選挙法といった部分もカバーしています。

 

あくまで広告実務を踏まえた解説がされていますので、非常にわかりやすく、イメージがしやすいと感じました。

特にグラフィックス広告とテレビCM等の動画広告に関しては、権利関係が複雑なため、そこをどう整理してどのように実務を行っているのかわかりやすく解説されていると感じます。

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※広告の著作権と広告に使用される素材の権利の関係性。

 

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※肖像利用に関する説明。一般的な広告出演契約の条件も記載されています。

 

個人的にkanekoが勉強になった点は下記です。

 

  • (契約等を考慮しない前提で)テレビCM等の動画広告自体の著作権の権利帰属先は原則として広告主である点

かつてはACC合意により、権利帰属に関してお互いに権利主張をしないという運用が行われていたところ、知財高裁平成24年10月25日判決以降は、原則広告主が権利帰属先である前提での運用がされている旨が判決文の解説とともに書かれています。

  • 「広告実務において著作権法上の『引用』の要件を満たすケースはほとんどない」と言い切っている点

当たり前なのかもしれませんが、はっきり記載されているのは参考になります。

  • モノや死者のパブリシティ権の問題、広告に著名人の「そっくりさん」を出演させる場合の問題、映像製作時に「第三者の著作物のイメージ」の影響を受けて広告を作成した場合の問題、といった法務として悩ましい(と思われる)部分についても言及されている点

画期的な解決方法が書いてあるわけではありませんが、参考になります。 

 

IoT関連技術の発展が広告ビジネスにも影響してきており、広告ビジネスに関連する特許権取得の増加が見込まれる旨を述べた上で、以下のように言及されています。

広告ビジネスにかかわる環境が急速に変化し、従来の広告ビジネス領域内にはいなかった新規参入プレイヤーが力を増す中で、特に広告ビジネスを生業とするプレイヤーにとっては、「広告ビジネスにおける特許/知財戦略」の立案や見直しに至るまで、課題が山積しています。広告を生業とするプレイヤーはこのような状況を改めて自覚し、いち早く戦略や体制づくりをすすめていくことが、今後の広告ビジネスの維持拡大に不可欠であると考えます。(p145)

 

これを見て思い出したのですが、

kanekoも2年ほど前に、大学院の授業の一環で「アクセスログを用いた広告関連技術の特許出願動向」を簡易調査してみたことがありました。

 

その際、以下の結果がでました。

※あくまで簡易調査であり、検索式*3はザックリかつ名寄せやノイズ除去、検索漏れの確認などは行っておりません。従って、データとしての正確性の保証もできません。趣味程度だと思って下さいませ。

※以下、2016年6月時点でのデータ抽出をベースにしています。(従って2015年の出願数は追えてない)

 

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赤字の2000年と2001年の出願は米国におけるステート・ストリート・バンク事件((State Street Bank 対 Signature Financial Group, Inc., 149 F. 3d 1368 (Fed. Cir. 1998)))やamazon.comのワンクリック特許登録等の影響(ビジネスモデル特許出願ブーム?)によるものと思われますが、それ以降も20~40件で安定的に特許出願がされているので、今後もこの分野の出願は(爆発的には増えないけど)そこそこあるのだろうなぁと思ってました。

ですので上記言及を見て、改めてこの分野は今後の出願動向に注目していこうと思った次第です。

 

 

というわけで?、こちらの書籍もkanekoの会社の机に置かれる1冊となりました。

 

 

参考までに目次はこちら

    ↓

第1編 導入編

 第1章 広告ビジネスの全体像

 第2章 広告ビジネス実務の概観

 第3章 広告ビジネス実務における各手法と法的イシュー

第2編 実践編

 第1章 著作権法

 第2章 肖像権・パブリシティ権

 第3章 商標法

 第4章 不正競争防止法

 第5章 特許法

 第6章 景品表示法・ 表示規制

 第7章 景品表示法・ 景品規制

 第8章 食品の表示・広告に関する規制

 第9章 広告撮影に関する関連法規

 第10章 イベント

 第11章 屋外広告物

 第12章 個人情報保護法

 第13章 広告とインターネット関連法規

 第14章 スポーツと広告ビジネス

 第15章 製造物責任法

 第16章 特定業種の広告規制

 第17章 公職選挙法

 第18章 広告と取引にかかわる法律

 

*1:最後に編集代表者や著者の経歴が載っているのは興味深いです。電通の法務って何人くらいいるのでしょうか?法律と関係ない部署を経験してから法務に来ている人もいるみたい。

*2:個人的にはアドテク領域への言及がもっとあるとよかったのですが、そこまで書くと本書の趣旨を逸脱してしまうんだろうなぁ

*3:検索式は以下

①【検索項目:要約+請求+発明名】【検索キーワード:広告】
②【検索項目:要約+請求+発明名】【検索キーワード:アクセスログ クッキー cookie 行動履歴 閲覧履歴 広告識別情報 広告識別子(すべてor検索)】
③【検索項目:更新FI】【検索キーワード:G06F13/00 G06Q30/02 G06Q50/10 G09F19/00(すべてor検索)】
検索論理式:①*②*③=500件

2018年の抱負と具体的施策とか

Sunrise in Inubosaki

Sunrise in Inubosaki,©Takashi Hososhima,CC BY-SA 2.0

 

 

どうも。中大がシード落ちのようで少しだけ悲しいkanekoです。

 

さて本年の(プライベートの?)目標を決めました。

 

  • ブログ更新:月2回以上
  • 読書:月3冊以上
  • 英語:一日1時間程度
  • プログラム:一日1時間程度
  • テニス:試合にでて勝つ

 

なんか中学生みたいな目標ですね。。。

 

・ブログ更新

基本的に自己満足なので、ペースを維持することをとりあえず目標に。

法務ブロガーの方はいつもすごいなぁと思います。

ペースとしては去年の2倍以上ということで月2回。 

 

・読書:月3冊以上

法律・知財系、IT系、ビジネス系の3つの分野を中心に読もうと思います。

現状、積読されている本がたまりまくっており、本を買うペースと読むペースの乖離が激しいのが課題でございます。

読書状況の管理としては読書メーターブクログを考えたのですが、

・英語やプログラムの管理と一緒にやりたい

・途中の進捗管理もできるようにしたい(ページ単位や時間単位)

ということでstudyplusというスマホアプリで管理することにしてみました。

 

こんな感じで↓

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標数値としては、 月3冊ペースで読まないと積読が解消しない(涙目

 

・英語

英語が大嫌いなのですが、もう実務上逃げられないなという時期に来たので

とりあえず読み書きだけでもある程度できるようにしたいです。

 

・プログラム

Legal Advent Calendar 2017の時に

とpnt_law22さんにアドバイスを頂いたのでjavaを勉強しようといろいろサーチしたのですが、

こんなサービスを見つけてしまい

aidemy.net

10秒で始められるということなので(結局Pythonを)早速始めてみました。

AI学習に特化しているのですがコース別に分かれているので自分のレベルに合ったコースを選択できるようです。

 

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AidemyPython入門の画面(2018/1/3時点)

 

あ、 なんかプログラム初心者でもできる気がする!

業務(特許系)上、AI系の知識が必要になりつつあるので、こちらもコツコツやってみます。

ある程度できるようになったら、なにかしてみたいなぁ(漠然 

 

さて、法務の端くれとしてはこういったサービスのプライバシーポリシーや利用規約の内容は気になるところです。

確認したところ、ごくごく普通の規約やプラポリに見えたのですが、1点(個人的に)面白い記述を利用規約に見つけました。

 

Aidemy学習内容のSNS/ブログ記事等の発信に関して
Aidemyではご利用ユーザー様の外部サイトへの投稿を歓迎しています。下記に記載した内容を守って掲載を行なってください。

留意事項

Aidemyのコンテンツ(演習問題や添削問題など)はほぼ毎日更新されています。Aidemyのコンテンツを投稿する際は、投稿日、掲載日時が分かるように掲載してください。
Aidemyのコンテンツを投稿する際は、Aidemyの内容であることが分かるように、Aidemy(https://aidemy.net)へのリンクを引用として掲載してください。
コンテンツを完全にコピーしての投稿は禁止しますが、汎用的な文法事項の質問や弊社コンテンツの一部のスクリーンショットの投稿などは可能です。

 

スタートアップの会社のサービスだと「まず拡散すること」が大事(収益化はその後)となることが多い気がするので、こういった記載を利用規約に明記するのは好感が持てました。

 

・テニス

試合云々の前に、最近肩を痛めたのでマイケル・チャンのようなアンダーサーブをまず身につけなければならないですね(苦笑

 今年はテニスを楽しむのではなく、勝ちにこだわって行きたいと思います。

 

というわけで本年もどうぞよろしくお願いします。

 

2017年総括

 

どうも。ゆとり教育の最前線(円周率は3で習った)で育った平成生まれのkanekoです。

 

毎年恒例のコミケ冬の陣を終え、戦利品(大嘘判例八百選の新刊を含むがこれに限らない)を携えて家路へ向かう電車のなかで書き上げております。

 

今年も残すところあと少し。

 

1年を振り返ると

・大学院を働きながらなんとか無事に卒業(学会発表も2つこなした)

・改正個人情報保護法対応に苦労(会社によってここまで解釈が異なるものなのかと勉強になりました)

・初めての株主総会に参加(メイン担当ではないけど)

・非公式に裏legalLTを企画(参加頂いた皆様ありがとうございます!)

・法務系 Advent Calendar 2017に参加

・テニスで肩を痛める

等々パッと思いつく限りでもいろいろありました。

 

去年以上に「アクティブに行動すること」を意識したことでいろいろ外から刺激を受けたかなと感じます。

 

おかげで「課題」や「やりたいこと」が少しだけ明確になった1年だったと思います。

もうちょっと熟考して来年の目標を決めようと思います。

 

今年のブログ更新頻度を見てみると

2016年:5件

2017年:9件

と微増。

 

来年はもっとブログの更新頻度をあげたいなぁ。。。

 

というわけで、

Twitterおよびリアルで絡んでいただいた皆様ありがとうございました。

来年も引き続き絡んでください。

 

来年は20代最後の年。わくわくする年にしたいですね。

 

皆さま良いお年を!

俺的オススメ著作権本紹介

これは法務系 Advent Calendar 2017のエントリーです。

 

どうも。最近同僚に「米津玄師の髪を薄くしたような髪型してるね」と言われたkanekoです。それは褒められているのでしょうか・・・

 

みねメタルさんからバトンを受け取りました。

 

dtkさんのエントリーに触発され?なんとなくこんなことを呟いてしまったので

 

著作権を体系的に勉強していく(知識をインプットする*1)うえで参考となる書籍』をkanekoの独断と偏見により書いてみることにします*2

 

著作権法という法律の世界ではマイナー?な分野*3かと思いますので、基本的には自己満ですが、少しでも皆様の参考になれば幸いです。

 

なお、各書籍にはAmazonのリンクを貼っていますが、アフィリエイトリンクではないです。

 

 

【目次】

  

レベルに応じて以下の流れで読んでいくといいと思います。

初心者:1.⇒2.

本格的に勉強しなおしたい人:2.⇒3.

3.だけじゃ物足りない人:とりあえず4.

 

 

1.著作権を全く知らない人向け(新書レベル:だいたい200頁以内)

非法学部の人も含めて著作権をゼロベースで勉強したい人にまず手にとって欲しい本をいくつかチョイスしてみました。

 

①福井健策「18歳の著作権入門」(2015年)

18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

 

わかりやすい文章に定評のある福井先生の数ある書籍の中でも一番のオススメ。

 

☆オススメポイント☆

・文章としての分かりやすさだけでなく、写真や実際の事例も(新書としては)豊富なので全く著作権を知らない人にはまずこの書籍をオススメしています。

 

個人的にはミッフィー対キャッシー事件や廃墟写真事件を例にした著作権侵害の説明はとてもわかりやすいので何回も読みなおしています。(例えば、翻案権侵害の「原著作物の表現上の本質的特徴を直接感得できる」とかって正直文字だけ見ても意味わかんないじゃないですか)

 

なお、想定読者の中心は「18歳以上の学生や若い社会人」とのことで、この世代にはストライクな?話題がチョイスされています*4。が、心が18歳であれば、問題ないでしょう!!

 

②鷹野凌「クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。」(2015年)

クリエイター向けにはこの1冊。あ、これも福井先生の監修ですね。

 

☆オススメポイント☆

・会話形式で著作権についての説明がされており、自然と著作権とは何か理解できるような工夫がされています。

 

なお、書籍以外でクリエイター向けだと最近特許庁が出した「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」の資料なんかも参考になりますね*5

 

③池村聡「はじめての著作権法」(2018年)

はじめての著作権法 (日経文庫)

はじめての著作権法 (日経文庫)

 

 上記以外だと池村先生の「はじめての著作権法」も外せません。

☆オススメポイント☆

・わかりやすくしつつも必要最低限の基礎知識を入れ込んでいる

・具体的事例(裁判例含む)を挙げながら、説明をされているので著作権初心者でも著作権法全体のイメージを掴むことができます

書評はこちら↓

 

 また、著作権だけでなく、知財全般としては【稲穂 健市「楽しく学べる「知財」入門」(2017年)】なんかはオススメです。インパクトのある表紙がtwitterでバズってましたね。

楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)

楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)

 

 

あとは、書籍ではないのですが、コピライトで小坂先生が連載されている「コピライト・ビギナー ―著作権のボーダーラインを学ぶ判例入門―」も(読者としては著作権に疎い法務の人をターゲットにしているものの)著作権法上の白黒を見極める上で非常にわかりやすい内容となっていてオススメなんですけど、これ書籍化されたりしないですかね?(特定の方面をじっと見つめる)

 

 

2.著作権をこれから勉強しようと思う人向け(300頁くらい)

1.を見て著作権法について大まかに理解した人や法律のバックグラウンドを持つ人向けへのオススメ本です。スタンダードな入門書の他、いくつか業界別のオススメもピックアップしてみました。

 

④島並良・上野達弘・横山久芳「著作権法入門 第3版」(2021年)

 

個人的入門書のスタンダード。若手知財学者*6によるわかりやすい説明が特徴です。初版が発売された2009年以降に著作権を勉強した人はこの書籍をベースにしている人も多いのではないでしょうか。

 

☆オススメポイント☆

・わかりやすさだけでなく、(入門書にもかかわらず)参考文献等の脚注情報が豊富。

・共著(章ごとに担当を分けている)であるにもかかわらず、ブレがほとんどないと感じます。

・令和2年改正に対応

 

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 ※こんなかんじ(上記は第2版の画像です。)

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 ※裁判例の紹介。比較写真があるのでわかりやすい。(上記は第2版の画像です。)

 

高林龍「標準 著作権法 第4版」(2019年)

 ④の島並他著作権法入門と並んでわかりやすいというご意見も多い高林著作権法。ところで上野先生も高林先生も早稲田の教授だったと認識しているのですが、早稲田の学生はどちらの書籍を使うのでしょうか。

 

☆オススメポイント☆

・わかりやすさを念頭に書かれているが、各論点(例えば応用美術)に関しては詳細に解説されている。

・令和2年改正に対応

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※こんなかんじ (上記画像は第3版です。)

 

⑥茶園成樹編「著作権法 第2版」(2016年)

著作権法 第2版

著作権法 第2版

 

「上記2つ以外では?」と聞かれると、この茶園シリーズ*7著作権法でしょう。

 

☆オススメポイント☆

・章の中の各節ごとに最初にポイントや事例が書かれた後に本文が始まるので、理解しやすい。

・理解しにくい用語については解説項目をいれている。

・上記の2つの入門書より内容としてはあっさり書かれている印象です。

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※こんなかんじ 

 

⑦その他業界別

分野別だとこちらでしょうか。

・インターネット分野

福井健策編「インターネットビジネスの著作権とルール (エンタテインメントと著作権―初歩から実践まで5)」(2020年)

著作権以外も含まれますが、松井茂記鈴木秀美・山口いつ子編「インターネット法」(2015年)

なお、この手の勉強を始めると必ずぶつかる「この謎のIT用語ってなんや」問題を解決するために1冊持っておくとよい本は影島広泰「法律家・法務担当者のためのIT技術用語辞典 」(2021年)

書評はコチラ(下記は旧版です。)↓

 

・音楽分野

福井健策編「音楽ビジネスの著作権(第2版) (エンタテインメントと著作権-初歩から実践まで-3)」(2016年)

高木啓成「弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール」(2020年)

安藤 和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 6th Edition 」(2021年)

安藤 和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス 実践編 6th Edition」(2021年)

 

・出版分野

福井健策編「出版・マンガビジネスの著作権(第2版) (エンタテインメントと著作権-初歩から実践まで-4)」(2018年)

 

・広告分野

志村潔「『広告の著作権』実用ハンドブック 」(2018年)

 

書評はコチラ↓

電通法務マネジメント局編「広告法」(2017年)

書評はコチラ↓

 

・ゲーム分野

福井健策編「映画・ゲームビジネスの著作権(第2版) (エンタテインメントと著作権-初歩から実践まで-2)」(2015年)

 

・ファッション分野

初心者向けではありませんが、角田政芳・関真也「ファッション・ロー」(2017年)。コスプレと著作権についても言及されている書籍です。

 書評はコチラ↓

 

 

3.本格的(体系的に)に勉強したい方向け~基本書シリーズ~

いわゆる「基本書」です。コンテンツ系法務の机に1冊はあるのではないでしょうか。

 

中山信弘著作権法 第3版」(2020年)

もはや説明は不要でしょう。著作権の基本書といえば本書を挙げる方が多いかと。800頁越えのため、通読するのはキツイかもしれませんが、頑張りましょう(第2版から100頁くらい増えてる)。

 

☆オススメポイント☆

・「あれ、これってどうなってたっけ?」と疑問思ったときの調べ先

・脚注の情報(裁判例や参考文献)が豊富なため、不明点は脚注の文献からたどって確認できる

・法制度の背景もしっかり記載されている

 

なお、令和2年改正については、巻末補遺で解説する形式になっており本文でアップデートされていないことに注意です。(令和2年改正に関する解説についても改正内容の紹介に終始しており、中山先生個人の見解があまり反映されていません。)

 

⑨岡村久道「著作権法 第5版」(2020年)

今や個人情報保護法等のサイバー法の第一人者のイメージが強い岡村先生の著書(書籍の構成も「個人情報保護法 第3版」に近いかもしれません。)。

中山著作権法ともう一冊買う余裕があるのであれば個人的には本書をオススメします。

 

☆オススメポイント☆

・改訂スピードがとにかく速い(令和2年改正にいち早く対応。リツイート事件最高裁判決もフォロー)

・図解が豊富

・注が本番(注の私見が興味深い)

・基本書でありながら、著作権法の理論だけでなく、実務(契約実務と訴訟)の面からも書かれている

・読者へのフォローアップが手厚い*8

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※翻案と複製の違い(上記は第4版の画像です。)

 

 

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※権利関係が複雑な映画の著作物の著作者・著作権者(上記は第4版の画像です。)

 

個人的には中山著作権法で「いまいち理解できないなー」というところを本書で確認することが多いです。

 

詳しい書評はコチラ↓
 

⑩三山裕三「著作権法詳説 第10版」(2016年)

著作権法詳説 [第10版]: 判例で読む14章

著作権法詳説 [第10版]: 判例で読む14章

 

副題に「判例で読む14章」と書かれているとおり、判例分析を中心に構成されています。

三山先生は去年まで理科大MIPにて教鞭をとられており、個人的には理科大MIPのトップ3に入る満足度の講義でした。

 

ちなみにちょいとお高い(定価7000円)ため、版が古いのを中古で買うのもありですが、版が古いと縦書きの場合があるので注意です。(少なくとも10版は横書き)

 

☆オススメポイント☆

判例の紹介が豊富

・コラムが非常に興味深い

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製作委員会方式の説明

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※ネット上における著作権侵害時の裁判所管轄と準拠法
 

⑪その他

訴訟に特化した書籍としては

高部 眞規子「実務詳説 著作権訴訟 第2版 」(2019年)とかどうでしょうか。

あとは挙げるとすると

作花文雄「詳解著作権法 第5版」(2018年)

田村善之「著作権法概説 第2版」(2001年)

とかでしょうか。

作花文雄「詳解著作権法 第5版」の書評はコチラ↓

 

田村先生の本はいつか改訂版でるのでしょうか。。。

 

 

4.もはや趣味

趣味です。ええ。

 

⑫加戸守行「著作権法逐条講義 七訂新版」 (2021年)

現行著作権法の起草者である加戸先生(私、あのマフラーが気になります!)の著作。

人によっては、基本書の一つとして位置づけている方もいらっしゃるかと。

研究をするならまず必要。実務では・・・あまり使うことはないような気もしますがどうでしょうか。

 (加戸先生が亡くなった後も改訂されて...おっと誰か来たようだ)

 

小倉秀夫・金井重彦編「著作権法コンメンタール 改訂版 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」(2020年)

 

ゼミ生OBの端くれとして紹介しないわけにはいかないでしょう。

小倉金井著作権法コンメンタールがついに改訂されました(2020/10/16発売)

以下のアップデートがあります。

・令和2年改正まで対応

・1冊→3冊構成(鈍器を卒業)

・1,777頁→合計2,204頁

・14,000円(税抜)→合計21,100円(税抜)

 

 

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旧版の分厚さがなつかしい。。。(写真は旧版の画像です。)

 

⑭松田政行「著作権法ラクティス」(2009年)

著作権法プラクティス―演習10講30問

著作権法プラクティス―演習10講30問

 

著作権法上の重要論点について30問の設問を設定し、それに対する解説がなされている書籍(2009年の出版)です。

新司法試験(著作権)での論文対策が前提になった解説がなされていますが、図表が(思ったより)豊富で説が分かれる論点はそれぞれの説の比較表が付されていたりと、一通り著作権を勉強した上で論点整理のために読むといいかもしれません。

2010年以降の改正には対応していないので注意です。

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インタラクティブ配信に関する説明 

 

山田奨治「日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか」(2011年)

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

 

勉強用というよりも読み物として。

著作権法改正の立法過程を検証し批判的に述べた著書。著作権法を勉強していると時々感じる「違和感」の答えのヒントがもしかしたらこれを読むとわかるかもしれません。

続編の「日本の著作権はなぜもっと厳しくなるのか」も合わせてどうぞ。

簡単な書評はコチラ↓

 

⑯岡邦俊「著作物を楽しむ自由のために」(2016年)

著作物を楽しむ自由のために: 最高裁著作権判例を超えて

著作物を楽しむ自由のために: 最高裁著作権判例を超えて

 

こちらも勉強用というよりも読み物として。

パロディモンタージュ事件、選撮見録事件、ロクラクⅡ事件といった重要判例において代理人をしていた岡先生の著作。著作物を楽しむ自由をもっと与えるべきではないかという点から各判例を批評しているのですが、気持ちいいくらいに判例をdisっています。上の山田奨治先生の本とセットで読むと面白いと思います。

 

⑰小泉直樹他編「著作権判例百選 第6版」(2019年)

著作権判例百選 第6版 (別冊ジュリスト 242)

著作権判例百選 第6版 (別冊ジュリスト 242)

 

 最後はおなじみ判例百選シリーズ。(あれ、おかしいなどうしても大嘘判例八百選を想起してしまう) 

第5版については、著作権クラスタなら誰しもが知る悲しい事件に巻き込まれましたが、第6版は内容が一新されています。なお、この悲しい事件は第6版では判例の一つとして掲載されています。

ちなみに第4版と第5版を比較しながら悲しい事件の判決文を読むと非常に味わい深い。

 書評はコチラ↓


 

コンパクトにまとめようとしたのに全然コンパクトにならなかった・・・orz

 

 

 お次はHirohitoNakada先生です!

 

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更新履歴

●2017/12/10

tanakakohsuke様からのコメントを参考に岡村著作権法のリンク先を修正

●2018/5/2

・池村聡「はじめての著作権法」を追加

・岡村久道「著作権法」のAmazonリンクを修正

・作花文雄「詳解 著作権法」の版を更新し、書評へのリンクを追加

電通法務マネジメント局編「広告法」の書評へのリンクを追加

・福井健策編「出版・マンガビジネスの著作権」のリンクを修正(第2版が発売されたため)

●2018/5/31

・角田政芳・関真也「ファッション・ロー」を追加

・影島広泰「法律家・法務担当者のためのIT技術用語辞典」を追加

●2019/1/5

・池村聡「はじめての著作権法」を微修正

・志村潔「『広告の著作権』実用ハンドブック」を追加し、書評へのリンクも追加

山田奨治「日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか」の書評へのリンクを追加

その他書式や文言を微修正

●2019/3/23

・小泉直樹他編「著作権判例百選 第5版」を「第6版」に修正し、書評へのリンクを追加(文言も一部修正)

●2019/12/27

・岡村久道「著作権法 第3版」を「第4版」に修正し、おススメポイントも修正。書評へのリンクを追加。

●2021/6/25

・以下について版をアップデートして一部文言とリンクを修正

・新規で以下書籍を追加

  • 高木啓成「弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール」
  • 安藤 和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 5th Edition」
  • 安藤 和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス 実践編 5th Edition」

●2022/2/5

・各書籍の出版年を追記

・以下について版をアップデートして一部文言とリンクを修正

  • 安藤 和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 6th Edition」
  • 安藤 和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス 実践編 6th Edition」
  • 加戸守行「著作権法逐条講義 七訂新版」 

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*1:勉強って

・知識をインプットすること
・知識を元にアウトプットすること(実際の取引に当てはめること、問題集を解くこと、資格試験を受けること等)
の繰り返しですよね。できてないけど。

*2:正直、「著作権を勉強したいんだけど」という相談が来た場合は

「まずは知的財産権管理技能検定(2級 or 1級)とかビジネス著作権検定(初級 or 上級)の勉強するのがいいのでは?」という返答が無難な気もしますが、あえて攻めてみる。

*3:「マイナー」なだけではなく、「わかりにくい」とも指摘を受けますね。

よく著作権以外(特に特許)を勉強している人から、「著作権はあいまいでわかりにくい」とか「基本書見ても実務に当てはめられない」といった指摘を受けるケースがあります。(個人的には特許明細書の方が圧倒的に読みにくく分かりにくいのでは?と思っちゃったりしますが)

*4:YouTuberや初音ミク、総統閣下シリーズとか。あ、もちろん、プーさんとかキャンディキャンディとかもでてきますよ!

*5:あ、文化庁のHPにもWebで配信している教材ありましたね。(「著作権テキスト」はもうちょっと中の人に頑張ってほしいなぁ。。。)

*6:確か初版時にこう言われていた気がします。学者における「若手」ってどこまでの範囲なんでしょうね。

*7:茶園先生はほぼすべての知財法に関して著作がありkanekoが勝手に茶園シリーズと呼んでいる。いつか全て購入して並べてみたい

*8:専用問題集の配布が出版元のHPから出されています。