Nobody's 法務

略称は「ノバ法」。知財、個人情報、プライバシー、セキュリティあたりを趣味程度に勉強している元企業ホーマーのまとまりのない日記。あくまで個人的な見解であり、正確性等の保証はできませんので予めご了承くださいませ。なお、本ブログはGoogle Analysticsを利用しています。

【書評】法律家・法務担当者のためのIT技術用語時点~法務のためのIT用語辞典~

 

法律家・法務担当者のためのIT技術用語辞典

法律家・法務担当者のためのIT技術用語辞典

 

 

著者は個人情報保護法の改正のタイミングで怒涛のセミナー講演をこなしつつ、多数の著作を書かれている影島広泰弁護士。
(どうやって執筆する時間を確保してらっしゃるのでしょうか・・・)


本書の構成としては、技術分野ごとに用語の見出しと解説(法的な点も含めて)が記載されています。

 

技術者向けではなく、あくまで法務(の中でも比較的技術知識に疎い法務パーソン)向けの用語辞典になっていますので、以下のような経験をした法務にとっては理解の助けとなる一冊だと思います。

 

  • 「企画とシステムで新しいビジネスモデルを検討しているのだけど法的な問題があるか確認してほしい」と言われてMTGに参加したところ知らないカタカナ用語のオンパレード・・・
  • BtoBメーカーの法務からIT系法務に転職したけど、業界用語がわからない・・・(「クッキー?なにそれ、おいしいの?」)
  • なんか弊社の事業戦略を聞くとAIとかFinTechとか言っててなんか相談が来そうな予感・・・
  • 前任が辞めてシステム開発契約を見る事になったけど契約書のカタカナ用語の意味がわからん・・・

 

本書の目次はこちら

1章 インターネットに関するIT用語
 第1 インターネットの仕組み1:発信者情報の開示
 第2 インターネットの仕組み2:通信技術
 第3 インターネットの仕組み3:ドメイン
 第4 WWWに関連する基本的な概念
 第5 電子メールに関連する基本的な概念
 第6 その他のインターネット上の技術に関する基本的な概念
 第7 インターネット上のサービスとアドテク(Ad-Tech)に関する概念

第2章 情報通信技術全般に関するIT用語
 第1 情報通信に関する基本的な概念
 第2 システム構成に関する基本的な概念
 第3 ハードウェアに関する概念
 第4 ソフトウェア・人工知能(AI)に関する概念
 第5 IT技術全体に関する用語

第3章 企業におけるITサービスの利用とシステムの構築に関するIT用語
 第1 企業が利用するITサービスに関する概念
 第2 ITシステム開発に関するIT用語

第4章 情報セキュリティに関するIT用語
 第1 基本的な概念
 第2 サイバー攻撃に関する概念
 第3 情報資産の保護に関する基本的な概念

第5章 フィンテック(FinTech)・パーソナルデータに関する概念
 第1 暗号化・電子署名に関する概念
 第2 フィンテック(FinTech)に関する概念
 第3 パーソナルデータ(個人情報)に関する概念

目次を見てもらえばわかるとおり、インターネットの基礎的なところからFinTechやAIといった分野まで広く浅くカバーしているイメージです。

 

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※用語(見出し)と説明がかかれています。説明の中で使われている用語についても他で説明している場合は、(p●●)と書かれていて、すぐ参照できるようになっています。


技術的に細かいことが記載されているわけではありませんが、最低限必要なレベルの記載はされている印象です。(個人的な感覚としてはITパスポートぐらいのレベルでしょうか。)


個人的には、アドテクノロジーが技術分野としてしっかりカバーされていることに感動しました。
法律系書籍において、アドテクノロジー周りに言及されている書籍はほとんどみないですし。(だから個人情報周りで苦労するんですよね。)
特にCookieSyncの説明(典型的なパターンのみですが)には図表付きで解説されており「これだよこれ!」と心の中で声をあげておりました。

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※CookieSync(Web Beacon利用パターン)の説明図とメタタグ関連の判例紹介の一部。わかりやすい。

 

というわけで、私の会社の机の上に置く1冊となりました。

【読書】データ分析の力 因果関係に迫る思考法

久しぶりの更新。 

 

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

 

 

データ分析において重要となる因果関係の考え方について、わかりやすく解説した入門書。

新書なのでさくっと読めます。

 

この本のすごいところはデータ分析に関する本なのに「数式がでてこない」

 

図表や具体例を挙げて説明されているため、

数式を見ると目がクラクラする私にとっては最適な本でした。

 

本書は、ランダム化比較試験(RCT)、RDデザイン、集積分析、パネル・データ分析といった分析手法の説明だけでなく、それぞれのメリット・デメリットもわかりやすく解説されています。

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※上記はパネル・データ分析に関する項目

 

良質なデータを取得・解析して因果関係を導くことの難しさを実感するともに

ビックデータやAIがバズワードになっている現状において、

相関関係と因果関係をしっかり見極める力を身につける必要性を改めて感じました。

 

また、この因果関係を見極める力は知財実務にも必要な知識だとも感じました。

例えば、特許公報(特許出願・登録動向等)と統計情報・技術情報等を組み合わせて分析してパテントマップ等を作成する場合、

「特定の分野の出願が増えた(減った)」ときに

・何が原因なのか・何が影響を与えたのか

・影響を与えたと思われる(仮定した)事象は特許の出願動向と因果関係があるのか

といったことを考える必要があると思います。(他にも考えるべきことがあると思いますが)

こういったときにおいて本書の分析方法は有効なのかもしれません(実務してないからわかんないけど)。

 

 

 

 

 

 

 

例の第三者委員会調査報告書から学べること

このTweetにそこそこ反響があったので、 

 

 

改めて、3月13日にDeNAのキュレーションメディア事業に関する第三者委員会調査報告書(以下「本報告書」)から反面教師として個人的に学んだことを備忘録として雑にまとめてみた。

 

本報告書の 

要約版はコチラ

全文版はコチラ

 

1.ビジネスマンとして考えたいこと。

①「質」と「量」を両立させるためにどうすればいいか。数字だけで評価していいのか。

・(「質」より「量」をとること自体は悪ではないと思うが、)「量」をとりつつも、「質」を担保できる方法はないのか。

・もしくは、センシティブな分野については、「質」の担保を優先するといった方法も考慮できないのか。

・数字以外の目標設定はできないのか。

 

②コミュニケーション不足の過程と行き着く先

『当委員会は、このようなコミュニケーション不全の個別具体的な内容にまでは踏み込まない。ただ、キュレーション事業におけるコミュニケーション不全何らかの形で関係していたすべての役職員に対して、以下のような苦言を呈しておきたい。』(要約版25p)

として挙げられた「苦言」がどこの会社でも当てはまり得る内容だったので以下引用する。

  • 上司には、部下からの諫言にも耳を貸す寛容さが求められる。それがなければ、誰も上司にものを言わなくなる。
  • イエスマンだけで周囲を固めることは、心地よいかもしれないが、何も見えなくなるだけである。
  • 上司の一言が部下に与えるインパクトは、その一言を発した上司の想像を超えることがある。「そんなつもりはなかった」では取り返しが付かない。
  • 上司が言葉足らずだと、その組織には、上司の考えを忖度する文化が生まれる。忖度が常態化すると、思い違いによる組織の意図せぬ暴走を招く。また、上司の考えを忖度することにばかりにとらわれた部下は、次第に自立的な思考をしなくなり、内向きな議論ばかりするようになる。
  • 上司同士のコミュニケーション不全は、部下同士のコミュニケーション不全を生み、やがては派閥を生む。
  • 社内の各部署がお互いの価値観や言動をリスペクトする姿勢を示せば、部署ごとの部分最適ではなく、会社や社会にとっての全体最適を追い求めるようになる。(要約版25~26p)

 「忖度!」「忖度!」←言ってみたかっただけ

 

③新規事業の際に必要なことを明確化できているのか。

・新規事業についての適切な定義づけは行えているのか。

・新規事業によって、社会にどのような価値を提供するのか。

・数値ベースによる売上の拡大のみが目的となっていないか。

 

④「走りながら考える」ことの難しさを理解しているか。

『既に走り始めた事業のリスクへの対応策を後から講じることは、事業の成長に水を差しかねない行為と受け止められ、なかなかうまく機能しにくいことも事実であり、こうした逆風にもめげずにリスク対応策を浸透させるためには、より一層のエネルギーとコストを伴うことを覚悟しなければならない。』(要約版22p)

「とりあえずやってみて何かあればやりながら軌道修正する」というのはスピード感を重視する企業ではよくあることで、それ自体を否定すべきものではないが、実際に「軌道修正」するというのは、運用が回っている状態だと「今更何いってんの?最初に指摘しろよ」とか「運用コストが増大するんだけど」という否定的な反応を現場側では当然されるわけで。。。。

これをやりたくないのであれば、事前のリスクの洗い出しと対策をどれだけできるかがキモになるのだろうな。

 

2.法務知財担当者の端くれとして改めて考えたいこと。

①その場の法的リスクの指摘で終わっていないか。その後ちゃんと対応されたかどうかまで確認ができているのか。

それっきりになっていないか。

 

②見て見ぬふりをしていないか。受身になっていないか。

いわゆる「黙認」になっていないか。

 

②法務的リスクと道徳的リスクのどちらをとるべきか。(直リンクは原則著作権非侵害だが、一方でネチケット的にはアウト)

ビジネスジャッジ的な部分もあるけども。

 

③自社に都合の良すぎる法的解釈をしていないか。(プロ責法の誤った解釈)

あとは利用規約に頼りすぎていないかとか。

 

④現場への法的知識の刷り込みはできているか。現場で運用を行うための必要最低限の法的知識レベルをどう担保させるか。

教育・研修だけで解決できるものではないとは思っているけども。

 

⑤サービス開始直前(もう止められない段階)で法務相談がくるということがないか。法務の把握していない(法的解釈を含む)謎マニュアルが現場で運用されていないか。

一部の方には共感頂けると信じてる。

 

コスプレと著作権~マリカー事件を踏まえつつ論点まとめ~

例のマリカー事件を踏まえて、改めてコスプレと著作権で論点をまとめてみました。

 

※過去の自分のブログやマリカー事件のtogetterを踏まえています。

【参考リンク】

kanegoonta.hatenablog.com

togetter.com

 

 

0.前提

ここでのコスプレ衣装は「アニメ等のキャラクターのコスプレ衣装」を前提としています。

メイドコスプレ・警官コスプレといった「元となるキャラクターがないコスプレ」は今回の内容の対象外となります。

 

1.ベース(元)となる著作物をどう認定するか

キャラクター*1自体は著作権法での保護対象ではなく、漫画やゲームの画像として表現された状態で初めて保護されます。

たとえば、アニメのキャラクターはアニメの一部として保護されることになります。

また、コスプレ衣装は「キャラクターの衣装デザイン(二次元)」を三次元の人間が着る衣装として創作したものですので、厳密にはアニメの中で表現されているアニメキャラクターの衣装デザインそのものが著作物として保護されるのか、という論点もあるのではないでしょうか。(アニメのキャラクターがアニメの一部として著作物と認定されればこの論点はあまり必要ないとは思いますが、衣装デザイン単体で保護された方が権利行使はしやすいのではないかと思ったり)

マリカー事件では、

(1)ゲームの中のマリオの画像が著作物として保護されるのか

(2)ゲームの中のマリオの衣装デザイン(赤帽子・赤シャツ・青つなぎ)が著作物として保護されるか

が論点となり、(1)は認定される可能性は高いのではないでしょうか。

(2)の見解については、2にて後述。

 

2.何をもって権利侵害とするのか

1がクリアになったとして、次にコスプレ衣装を作ること、着ること、貸すこと等が著作権法上の利用行為(複製権・貸与権・上演権等の21条~28条に規定される権利)に該当するかどうかを検討する必要があります。

ここでの論点は以下の2つと思われます。

①コスプレ衣装自体を複製(翻案)物とするのか

コスプレ衣装自体が元となる著作物の表現上の特徴的部分と直接感得できる場合は複製(翻案)行為が行われたと考えられます。

ただ、この場合、元となる著作物(例えば、アニメのキャラクター画像)の表現上の本質的特徴をどう認定するかが問題となってきます。

マリカー事件でいえば、マリオのキャラクター画像のどこを表現上の本質的特徴と認定するかということです。

赤帽子・赤シャツ・青つなぎという部分に表現上の本質的特徴を見出すのであれば、コスプレイ衣装を複製(翻案)物として認定するは容易でしょうが*2

一般的なキャラクター画像は「キャラクターの顔」の部分も表現上の本質的特徴の重要な部分であると考えられる点、

赤帽子・赤シャツ・青つなぎといったシンプルな部分を著作権としての保護対象(独占できる対象)とするのはやりすぎと感じる点(仮に認められた場合でも、権利範囲はデッドコピーに限定すべき)

から100%侵害といえるかは疑問があると個人的には感じています。

②コスプレ衣装を人が着用した状態を複製物とするのか

人体と合わさることで元の著作物の表現上の特徴的部分と直接感得できる場合は、コスプレ衣装を着用した時点で初めて複製(翻案)物として認定されることになるような気がします。

コミケやとなコスといったところでコスプレをしたり、コスプレ写真集を販売する人々は「ガチのコスプレイヤー」であり、キャラクターになりきるために顔(化粧・ウィッグ等)や体型まで似せてきます。

仮に元となる著作物(キャラクター画像)の表現上の本質的特徴を「キャラクターの顔」や「体型」を含めて認定された場合であっても、「(あまりにキャラクターに似せてきている)ガチのコスプレイヤー」は複製(翻案)物として認定される可能性があることになります。

ただこの場合、人体を著作権法上の権利義務の対象とすることができるのかという問題が生じることになります。

なお、判決としては、人体の「入れ墨」を著作物として認定した事件があります*3

人体を著作権法上の差止(廃棄)請求の対象とできるのか。

非常に興味深い論点ですね。

 

3.応用美術の論点は生じるのか

この論点は基本的には生じないと考えれられます。もちろん、元ネタとなるアニメのキャラクターがないようなコスプレ衣装であれば、「量産できる実用品」として応用美術の論点が生じると思われます。

なお、コスプレ衣装ではありませんが、(元ネタとなるアニメがあるわけではない)おもちゃのファービー人形は、過去著作物として保護されないと判断*4されています*5

 

なんかつきつめたら論文一本書けそう(笑)

*1:架空の人物や動物等の姿態、容貌、名称、役柄等の総称を指し、小説や漫画等の具体的表現から昇華した抽象的なイメージ

*2:マリカー事件では、マリカー側はコスプレ衣装の制作は行っていないため、複製物の貸与を行ったとして貸与権の侵害となります。HP上でのコスプレ写真のアップロードは複製権と公衆送信権侵害の余地はあります。

*3:http://www.ypat.gr.jp/ja/case/copyright/01.html

*4:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/650/004650_hanrei.pdf

*5:TRIPP TRAPP事件の判決がでてからは先行き不透明な状態ですが

「音楽教室での著作権料徴収の件」で感じるズレ

例の音楽教室から著作権料を徴収する件が話題になっていたわけですが、雑感を少しだけ。

法律論については多くの方が解説*1されているので、ここでは詳しくは書きません。

ネット上では「JASRACやりすぎやろ(意訳)」と叩かれているわけですが、この件で改めて感じるのは、「一般人の感覚」と「著作権法」に大きなズレがあるのだなということです。

つまり、「著作権法は一般の人が納得できる法律になっていない点がある」と。

だからこそ上記のような感情論が起こるのかなと思いました。

 

この「ズレ」の原因を何なのか?

 

まず、著作権法は、「思想又は感情を創作的に表現しているもの」である著作物について、利用者の公正な利用と権利者(著作者等)の保護を規定して、文化の発展に寄与することを目的としています。

従って、国民の誰もが著作者になり得るし、誰もが利用者にもなり得るため、利用者と権利者のバランスが大事となってきます。

にもかかわらず、著作物の利用者を大きく制限し著作者の権利を拡大するような謎理論が存在している現状があります。

 その謎理論とは、

著作権法を少しでも勉強していればでてくる

「一人でも公衆」理論や

「カラオケ」法理等の規範的主体論(物理的に侵害行為を行っていないものを侵害の主体と認める理論。例:カラオケスナックでの歌唱の主体は客ではなく、カラオケスナック側*2

といった理論(他にもいろいろあるけど)であり、

これらの過去の判例から導き出された権利者寄りの法的解釈は、異論はあるものの実務家や法学者の間では定着しているが、「一般人の感覚」からは明らかにおかしいのではないでしょうか。

しかもこれらは条文上には記載がないですし。(過去審議会で検討はされたけど)

 

 

 

今回の件での批判は、

JASRACというより(もちろん個人的には今回の件はやり過ぎ感がありますし、音楽でお金儲けをしているならば何でも利用料をよこせというスタンスには違和感を覚えていますが)

「ズレ」を生み出している元凶である

JASRACの主張を認めて謎理論を展開した過去の裁判所の判断

・今回のJASRACの主張を認める余地が解釈上可能な現行の著作権法

に対して行うべきではないでしょうか。

 

そしてその上でもう一度、間接侵害規定の整備等(まぁ無理なんでしょうが)で「ズレ」を明確にしつつ、その「ズレ」を広く理解させる(著作権教育とかかな)必要があるのではないかと。

 

そんなことを考えながら日々もやもやしております。

*1:

主な論点としては、

著作権法第22条の「著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として・・・演奏する」ことに該当するかどうかという点について、

・「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的」といえるのか

・誰が誰に向かって演奏するのか(演奏の主体は誰か)

・権利制限規定に該当するのか

・演奏権は「消尽」しているのか(島並先生のtwitterでの発言より)

 

以下参考となるブログ

・福井健策先生「JASRAC音楽教室問題から1週間。取材等で話したことをざっくりまとめてみる」

http://www.kottolaw.com/column/001379.html

・栗原潔先生「JASRAC vs 音楽教室:法廷で争った場合の論点を考える」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuriharakiyoshi/20170206-00067411/

・同上「JASRAC音楽教室からも著作権使用料を徴収しようとする法的根拠は何か?」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuriharakiyoshi/20170202-00067263/

小倉先生「音楽教室JASRAC

http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2017/02/jasrac-0677.html

同上「音楽教室JASRAC管理楽曲は「演奏」されているのか。」

http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2017/02/jasrac-3747.html

 

*2:この理論は、カラオケ装置リース会社、テレビ転送サービス、音楽(変換)ストレージサービス、ファイル共有サービス、自炊代行まで広がっている

#legalAC 法務が働きながら知財系大学院に行ってみた

法務系 Advent Calendar 2016のエントリーです。

Utastmさんからバトン受け取りました。

 

 

kataxさんの「無資格法務のキャリアパスについて」というエントリーがとても考えさせられるものがあったので、これに便乗して(?)まさに無資格法務として知財法務コースを目指ざしたいなぁと思った人間が「働きながら知財系大学院に行くという、ちょっと普通じゃない選択をしてみたらどうだったか」ということを独断と偏見で書いてみようと思いましてこの内容でエントリーしました。

これから働きながら大学院に行こうと思っている人にとって少しでも参考になれば嬉しいです。


※あくまで知財系の大学院の話なので、ロースクール等の大学院には当てはまらないことがあるかもです。
※この内容をチョイスした時点である程度身バレ覚悟です。

※このエントリーはあくまで私個人の見解です。


1.【結論】

無資格法務として働きながら知財系大学院に行くことは
①はっきりとした目的意識
②何かを捨てる覚悟を持つこと
③職場(と家族)の理解とそこそこの体力(とそこそこのお金)
があれば得るものが大きいし、仕事とも両立できると思います。

一方、少しでも上記が満たせない場合は

・資格(例えば弁理士)をストレートに目指すか

・(実務を行える職場にいるのであれば)実務を通して知識と経験を積む

ほうが無難だと思います。


2.【いまの自分】


私は、
平日昼間はIT系?でひよっこ法務部員として働きつつ、
平日夜と土日は大学院生として勉強する生活をしています。

仕事の割合としては、
契約法務と案件相談(著作権含む)が7割
なんちゃって知財(出願サポート・クリアランス・体制作り)が3割
といったところです。

大学院では、特許、商標、著作権といった分野を幅広く勉強しています。

今に至った経緯としては、新卒で営業として3年間働いていて、今後のキャリアを考えたときに、

「ある程度好きなことを仕事にしたい(今の会社ではそれば難しい)」と思い、

知財を大学院で勉強しつつ、法務と知財を実務として仕事することを決めて、転職&大学院入学をほぼ同時に行った、といった経緯があります。

なお、実務を知財一本にしなかったのは、法学部出身だったというよりは、理系出身ではない以上、知財(特に技術的な知識を要することの多い特許分野)一本で未経験のペーペーが転職するのはリスクが高いと判断したためです。



3.【働きながら大学院に行く上で必要だと思ったこと】

①目的意識

当たり前かもしれませんが、
・自分のキャリアとして、ゴールは何なのか

・いつまでに何をしたいのか
・そのために大学院で何を学びたいのか
といったところの意識ははっきりさせておくべきだと思います。

もちろん、途中でずれてくるものだとは思いますが、ここがしっかりしていないと、(言い方が悪いかもしれませんが)大切なお金をドブに捨てることになるかもしれません。


なお、知財系の大学院によっては一定の要件を満たすと弁理士試験の一次免除があったりしますが、
単純に弁理士をゴールとして目指すなら資格の学校行く方がコスパ(お金と時間的な面から)がいいと思います。

ちなみに私の場合は、

知財に関する基礎的知識だけでなく、実務的知識も身につけること

知財業界の知り合いを少しでも広げること

の2点を目的として大学院に入学しました。


以下、大学院に入って気づいたことを書いていきます。



【メリット】

(1)学んだことがすぐ実務に行かせる
これは自分の「学習分野=実務の分野」であることが大きいと思うのですが、
「あ、これ先週講義で習ったやつだ!(進●ゼミ風に)」ってほんとになって少し感動しました。

ちなみに、大学院の講義ってどんなのかというと、

いわゆる普通の講義形式のものから特許明細書をひたすら読んだり、明細書を作成して教授に添削してもらったり、特許調査のやり方を学んだり、ライセンス契約書つくったりする講義があって個人的には面白い講義が多くありました。


(2)交友関係を広げられる
やはり共に勉学に励む仲間や実務家の知り合いができたことは大きいです。
私のいる大学院には、文系理系問わず、学部卒のピチピチ(これ死語ですかね?)で若い学生からバリバリの知財部員まで幅広い世代の人がいます。

また、講義によってはゲスト講師として来た実務家の方との交流もできたりします。OBとの交流はそこまで多いとは感じませんが、ないことはないです。

知財業界は比較的?狭い業界ですので、)一人知り合いができると芋づる式に多くの知財業界の方と知り合いになれます。最終的に学会、オフ会、セミナー等に参加すると必ず知り合いがいる状況が生まれます。

(3)気兼ねなく実務家や教授に質問が出来る
一応学生ですからね。講師(知財部や特許庁出身の教授から知財系の実務家まで。実務家と学者の割合は大学院によってまちまち。社会人向けは実務家の割合が高い。)に会社での実務における質問をしまくれます。
学費払っているから当然かもしれないけど。
学生万歳。

(4)ちゃんと勉強する
 これは間違いなく、私自身が学部時代まっっったく勉強していなかった反動だと思いますが、自分の金で、目的意識をもって学校に行くとちゃんと勉強します。
(5)学割が使える
地味ですが、もろもろ学割が使えます。

 

(6)所属する学校の名で学会発表ができる。
企業勤めの無資格法務だと肩書きが企業名しかないことが多いため企業によっては学会発表がしにくい場合はあるかと思われます。(特に業務に直接関係のないテーマであった場合はなおさら)
その点、学校名で学会発表できると楽です。大学院の学生としての自己研究の発表なので通説だってdisれちゃいます。(もちろんそれ相応の反論は覚悟しないといけないですが)

 


【デメリット】

ただ、一方でデメリット(課題?)もあります。
(1)学生ごとにモチベーションの差が生じている。

これはあくまで私の私見ではありますが、
学部卒も受け入れる大学院だと、残念ながらいわゆる学生の「モラトリアム」となっている面が否めない点があり、やる気のある院生とそうではない院生とで差があるように感じます。(もちろん学部卒でもやる気ある学生はいます)
その中でもいかにして自分のモチベーションを高く保っていくかが大事になってくると感じました。
私の場合は、入学してから同じような問題意識を抱える院生と自主ゼミを立ち上げ、切磋琢磨できる環境を作り出すことで周りに引きずられてモチベーションが下がることがないようにしていました。

(2)知財系大学院は全体的に学生数が減っている

ソースはちゃんと調べていませんが、

かつて知財が盛り上がっていた時期に比べると減少傾向のようです

一部の知財系大学院では再編が進んでいます。

 

(3)その他

うん。これ以上は書けないかも(苦笑)


②何かを捨てる覚悟を持つこと

サラリーマンと大学院生を両立するためには、「有限な時間をどう効率的に使うのか」という問題(当たり前ですが)にぶち当たります。

従って何かを捨てることになります。

例えば、

・趣味の時間を捨てること

 私の場合は毎日の深夜アニメ鑑賞を断ち切りました。

 (まぁ夏と冬は有明に行きますが。Twitterも断ち切れてませんが。)

・優先順位をつけること

 仕事>学校>趣味>>>>越えられない壁>>>>家族

 という優先順位を最初からつけました。

 また仕事の中、学校の中、趣味の中でも明確に優先順位をつけました。

 そして低いものは切る、か他の人にお願いする。(といいつつまだまだできていない)

とはいえ、仕事が忙しいときは学校に遅刻していくこともあったり。

 

 

③職場(と家族)の理解とそこそこの体力(とそこそこのお金)


職場の理解は絶対に必要だと思います。

私の場合は奇跡的に働きながら大学院にも行かせてくれる会社に出会えたので職場の理解がある前提で大学院に通えていますが、所属する会社によっては難しいかもしれません。

あと家族の理解も必要です。

特に家庭をお持ちの方は大学院に時間が割かれてしまう以上、家庭への時間を割くことができなくなってしまいます。

そしてなにより体力。

どんなに効率よく仕事をしていても、レポート・テスト期間は睡眠時間を削ることになります。

継続的な運動と栄養の偏らない食生活(とできれば最低限の睡眠時間)は必要。(ラーメン●郎とかダメ!ゼッタイ!)
最後に学費。

学費は大学院によってまちまちなのですが、ある程度は貯めておく必要があると思います。奨学金という方法もありますが、できれば避けたいですよね。。。

ただ、最近は専門職大学院における教育給付金の制度があるので、負担が軽くなる場合があります。

ちなみに私は申請し忘れました。。。。。(入学前の事前申請らしい)



4.【最後に】

ものすごく個人的なことを書いてしまっているのですが、そんなエントリーが1個くらいあってもいいのかなと開き直っています。

卒業後どうするの?というのを最近良く聞かれるのですが、

とりあえず最低限の知識は身につけることができたと思うので仕事に集中しようと思っています。

ただ仕事をメインとしつつも

・法務知財ブロガーを目指す

・アカデミックを続ける(博士課程に行く)

弁理士試験の勉強を始める

という選択肢も考えていたりします。

 

まとまりないですが、この辺で。

次はmiraisaaanさん!

よろしくお願いしまぁぁぁす!(サ●ー・ウォーズ風に)

違法コンテンツへリンクを貼るのは著作権侵害なんだっけ問題

久しぶりにブログを書きます。

君の名は。」面白いですよね。

 

ところで最近こんな出来事が

togetter.com

 

 

nlab.itmedia.co.jp

どうやら「君の名は。」の違法動画がでまわっているので、それを指摘するための公式アカウントが開設され手作業?でひたすら違法動画のリンクを張っているアカウントにリプを送っているようですね。

 

中の人大変だなぁと思うしだいでございます。

 

そこで、

「違法動画にリンクを張るのは著作権侵害なの?」

という疑問はあろうかと思います。

ちょうど卒論のテーマがその辺なので、少しブログに書いてみようと思います。

 

※ここでは

フレーミングやエンベッドといった「埋め込み型リンク」

・画像への直リンクを貼る「イメージリンク」

は法的問題点が増えるため考慮しません。

単純なテキストURL型のハイパーリンクを想定しています。

 

※詳しい資料等はわかる範囲で脚注にぶちこんであります。ご興味のある方はそこから調べてもらえれば。

 

※筆者は知財を現在勉強していますが、士業の資格をもっているわけでもないそのへんによくいるニワカ知財クラスタですので、詳しく知りたい方は専門家にご相談下さい。また、筆者が間違って理解している部分もあるかもしれませんので、その際はご指摘下さいませ。

 

1.【結論】

違法コンテンツへのリンク行為は

①リンク先のコンテンツが違法アップロードされたものと知っていてリンクを貼ること

②リンク設置時はリンク先が違法なコンテンツかどうかを知らなかったが、リンク設置後に権利者から指摘がきたにもかかわらずリンクを張り続けること。

著作権侵害の幇助になるおそれがあるため、やめておいたほうが無難

 

2.【原則論】

通常のリンク行為は、あくまでリンク先のコンテンツの存在場所を示すのみであり、当該コンテンツを複製しているわけではなく、また当該コンテンツを送信しているのはあくまでリンク先なので、複製権及び公衆送信権を含めた著作権を侵害しないもの*1

と考えられます。

 

3.【リンク先が違法コンテンツの場合は?】

ただ、リンク先が違法なコンテンツである場合はちょっと話が別です。

 

「リンク先が違法コンテンツな場合」とは、

  1. リンクを見て実際にリンク先にとんでいくインターネットユーザー(以下、「ユーザー」といいます)が、リンク先で違法にアップロードされたコンテンツを視聴できる場合(ユーザーは違法行為をしていない。) 【例:リンク先が違法にアップロードされた映画で、ユーザーはリンク先のサイトにおいてストリーミング再生で視聴できる。】
  2. ユーザーが、リンク先で違法にアップロードされたコンテンツをダウンロード等できる場合(ユーザーは違法行為*2をしている)

に分けられます。(以下、まとめて「違法コンテンツ分類」といいます。)

 

リンク先が違法なコンテンツであった場合、リンクを貼った者は

直接著作権侵害をしているわけではないが、

リンク行為によって違法送信の拡大をしているということで(共同)不法行為責任(民事上の著作権侵害の幇助)を負う可能性が従来から指摘*3されています。

ただ、インターネット上のコンテンツが違法かどうかをユーザーが判断をするのは一般的には難しいため、「ロケットニュース24事件*4」では、

著作権侵害公衆送信権等)を否定した上で、不法行為については、

リンク先のコンテンツが違法/合法の区別がつかない前提で、

権利者からの通知が来た時点(リンク先のコンテンツが違法だと知った時点)でリンクを削除しているので、否定されています。

 

逆を言うと

①リンク先のコンテンツが違法アップロードされたものと知っていてリンクを貼ること

②リンク設置時はリンク先が違法なコンテンツかどうかを知らなかったが、リンク設置後に権利者から指摘がきたにもかかわらずリンクを張り続けること。

はヤバイかもしれない。

 

そういえば、リッピングソフトへのリンクを貼った者を著作権侵害の幇助として検挙した例*5がありましたね。違法コンテンツ分類では(2)に該当かつリンクを貼った者に悪意があったようなので、悪質な例かもしれません。

あと発信者情報開示請求で「違法アップロード者=リンクを貼った者」とみなされた事例*6がありましたね。

 

君の名は。」の事件は、

①は、人によっては違法と知らずにリンクの設置をしているかもしれませんが、

②は、製作委員会のリプによって少なくともリンク先が違法コンテンツであることがリンクを貼った者も気づくので、そのままリンクを貼り続けるのは当てはまりそうですね。

 

4.【余談:リンクを貼った者は著作権の侵害主体にならないのか】

これは従来から検討されてきていたもので、いわゆる「リーチサイト」の問題で検討されてきた問題です。

リーチサイトの正確な定義はないのですが、「別のサイトにアップロードされた違法コンテンツへのリンクを集めたサイト」とでも言っておきましょうか。

つまり通常のリンクではなく、悪質なリンク集といったところです。

コンテンツホルダーからは、「違法コンテンツの拡大を促進*7し、かつリーチサイトの運用者は広告収入で儲けている」点から法規制を求めていますね。

過去は、解釈論として、著作物の使用の主体を、一定の要件のもと、「実際に使用しているユーザー」ではなく、「そのユーザーに手を貸して利益を得る業者」として考えることで著作権侵害を構成する規範的主体論(いわゆる「カラオケ法理」)に当てはめられるかどうかが議論*8されていましたが、

現在は、みなし侵害規定にぶち込むことで法規制をしようという動き*9になっています。

インターネット(表現)の自由とも抵触してきますし、みなし侵害の要件によって、拡大解釈されて一般のユーザーのリンク行為に過度な規制がかかるのも問題だよなと思うしだいです。

ここは今後の動きに注目ですね。

 

また、EUでは、違法コンテンツへのリンクに関して、【非営利かつ知情性なし】以外は広く著作権侵害になりうる判決が欧州司法裁判所からでて話題*10になっていますね。

この辺はまた今度。

*1:同趣旨の内容の文献として、佐藤恵太「インターネット利用に特有の諸技術と知的財産法」ジュリスト1182号46頁、飯沼総合法律事務所編『デジタル著作権の知識とQ&A』(法学書院、2008)86,87頁、鈴木基宏『Q&A著作権法』(青林書院、2011)170頁、松田政行編『著作権法の実務』(経済産業調整会、2010)160頁〔松田政行〕

*2:私的利用目的でも違法コンテンツのダウンロードはNGである旨の著作権法第30条1項3号を前提としていますが、ここは動画や音楽を前提としており、漫画やHP等の静止画・文字系のコンテンツは対象外なので本来はもう少し詳細(侵害者の悪意も含め)に区分が必要だよなぁとは思ってはいます。(やる気ない)

*3:田村善之『著作権法概説 第2版』(有斐閣、2006)192頁

*4:大阪地判平成25年6月20日判決。本事件は埋め込み型リンクの事案なので、本来は人格権の問題(同一性保持権と氏名表示権)や侵害主体の問題(いわゆる「埋め込み型のときは送信主体がリンク元だ!」という議論)が出てきます。また、本事件は地裁判決レベルかつ本人訴訟である点も(今後別の訴訟では逆の結論が出る可能性がないわけではないということで)ある程度考慮すべきでしょう。本事件を解説したブログとしてはhttp://www.azx.co.jp/blog/?p=359

*5:一般社団法人日本映像ソフト協会「2015/8/19 JVAニュースリリースhttp://jva-net.or.jp/news/news_150819/news.pdf

*6:東京地判平成26・1・17 LEX/DB 文献番号25446210

*7:国立大学法人電気通信大学平成23年度知的財産侵害対策ワーキング・グループ等侵害対策強化事業(リーチサイト及びストレージサイトにおける知的財産侵害実態調査)報告書」(平成24年3月)。

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E002243.pdf

*8:論文としては、安田和史「リーチサイトの運営者にかかる著作権侵害の責任に関する考察」日本大学知財ジャーナルVol.7(2014)http://www.law.nihon-u.ac.jp/publication/pdf/chizai/7/04.pdf

なお、文化庁審議会としては、文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会 平成24年第3回~第7回で議題になっている。以下参考までにリンクを貼る。

第3回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_03/index.html

第4回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_04/index.html

第5回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_05/index.html

第6回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_06/index.html

第7回http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_07/index.html

*9:知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会 次世代知財システム検討委員会報告書~デジタル・ネットワーク化に対応する次世代知財システム構築に向けて~(2016)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/hokokusho.pdf

*10:福井健策先生の記事http://japan.cnet.com/news/business/35088980/